総入れ歯を使われている方の多くは、会話や食事の際に動くこと、簡単に外れることなどを経験しておられ、義歯安定材を使ったりするなど、かなり苦労されておられます。
そのような方が相談に来られますが、対応策の1つとしてオーバーデンチャーがあります。
目次
オーバーデンチャーとは
オーバーデンチャーとは、顎の骨にインプラントというチタン製のスクリューを数本ほど埋め込み、そのインプラントとしっかり連結するような連結部品を組み込んだ入れ歯を載せる治療法です。
インプラントの無い状況で入れる入れ歯は、残った歯を固定源にするために歯にバネをかける必要があります。これが笑った時にバネが見えるという審美性で問題となります。
また歯が全く無い顎の場合は、入れ歯と歯肉との吸着力でしか保持できないため、食事や会話の際にどうしても安定感が足りない、という悩みが多くあがっています。
オーバーデンチャーは、この問題点を解決できる方法の1つです。
オーバーデンチャーの固定方法について
オーバーデンチャーにおけるインプラントと入れ歯とを連結する方法には、次の4種類があります。
ボールタイプ
ボールタイプとは、インプラントの先端の部分が丸いボール状(凸面)になっていて、入れ歯側にはそれに対応するよう凹面の部品がついている入れ歯です。
イメージとして近いのは、洋服のスナップボタン(ホック)です。パチッと着脱ができます。入れ歯側の凹面に食渣が入り込むことがありますので、食後の入れ歯の清掃は丁寧に行う必要があります。
マグネットタイプ
マグネットタイプとは、小型で強力な磁石を入れ歯の内側に埋め込み、インプラント側の金属板とで磁力によって入れ歯を固定する方式です。
入れ歯、インプラントとも構造がシンプルになり、プラークが溜まりにくい構造になるため、掃除がしやすくなります。
バータイプ
バータイプとは、隣り合うインプラントどうしを丸いバーで連結し、そのバーに入れ歯を固定させる方法です。総入れ歯だが、骨の幅の関係でインプラントが2本しか埋入できない場合などで使う方法です。
ミニイプラント
ミニインプラントは下顎だけに使用できます。小さいサイズのインプラントを数本使う方法です。
オーバーデンチャーのメリット
オーバーデンチャーのメリットは、なんといっても入れ歯が安定することです。
従来の入れ歯は、食事や会話のたびに入れ歯が動く、安定しないため会話や食事がしにくい、といった悩みがつきものでした。友人と外出し、食事や会話を楽しむなどにおいて、この悩みは大きな問題です。
オーバーデンチャーにより入れ歯がしっかりとインプラントに固定されることで、自分の歯のようにしっかりと強く噛むことができ、会話もスムーズにできるようになります。このことから、入れ歯によるストレスが軽減されます。
また、顎全体をインプラント治療する場合に比べて、インプラントの本数が少なく済み、歯の部分の素材(上部構造)も入れ歯の素材で作成するため、治療費の総額が抑えられます。
オーバーデンチャーのデメリット
オーバーデンチャーのデメリットとして、保険診療ではなく自由診療となりますので、費用は医院によって様々ですが、保険診療の総入れ歯に比べると割高な治療となります。
またインプラントを入れる外科手術が必要になりますので、歯科治療恐怖症など、外科手術が耐えられないような方には、適用が厳しいと考えられます。
インプラントは治療後のメンテナンスがとても重要です。
顎の骨と歯肉の中を貫通するインプラントは、プラークなどによる感染に弱いため、日々の口腔内清掃はしっかりと行い、かつ歯科医院での定期的な専門的メンテナンスが必要です。もしインプラント周囲に炎症が起きた場合は外科的な清掃はもちろんのこと、最悪の場合はインプラントの打ち直し(再埋入)および入れ歯の固定する装置の修正作業が必要となってきます。
また、オーバーデンチャーは安定しますが、その結果、噛む力が自ずと強くなります。そのため、入れ歯が早くすり減るようになります。
近年では、骨粗鬆症やガンの骨転移の治療として、ビスフォスフォネート系薬剤や、ランマークなどといった、骨に作用する様々な薬剤を使用する患者さんが増えてきました。
その副作用として、治療に難渋する顎骨の感染(排膿や腐骨の分離)や壊死が広範囲に起きるという「薬剤関連顎骨壊死」(MRONJ)が多数報告されています。
このメカニズムも解明されつつありますが、また根本的治療法や予防法はありません。このような方へのインプラント治療は、顎骨壊死のリスクが高いと予想されるため適用できません。
【まとめ】総入れ歯をインプラントで安定させるオーバーデンチャーとは
オーバーデンチャーは、インプラントを固定源とした安定した入れ歯の治療法です。自分の歯のように、しっかりと噛みたい方にはおすすめです。
これまでの入れ歯が不安定で食事や会話に困っているという方、また近々大きな入れ歯を入れる必要がある方には、歯科医師と相談してオーバーデンチャーの可能性や費用などを相談してみてください。