ウォーキングブリーチとは

ウォーキングブリーチとは、虫歯や外傷などにより歯髄が壊死してしまった変色歯(無髄歯)に、高濃度の過酸化水素と過ホウ酸ナトリウムからなるペースト状の漂白剤を歯髄腔内に充填させ、象牙質に直接作用させることで歯を漂白(ブリーチング)していく治療法です。
歯質の削除量は少なく歯冠の形態を変えずに審美的な回復が見込めますが、変色の改善は程度により複数回の処置が必要です。また歯冠形態が大きく失われている場合は適用外となります。
ウォーキングブリーチの特徴
神経がない歯に有効なウォーキングブリーチですが、注意しておきたいことがいくつか存在します。
神経が死んでしまった歯に適用
ウォーキングブリーチは、神経が生きている歯には刺激が強すぎるため適応外となります。神経が死んでしまった歯が適用となります。
ほとんど歯を削らない
神経治療の場合、歯の裏側に小さな穴をあけて死んでしまった神経を除去する治療が行われますが、その穴から同様にアプローチしますので歯の削除は最小限ですみ、歯の表面は一切削りません。
変色の後戻りがある
ウォーキングブリーチが成功しても、歯は経時的に黒ずんでいきます。歯の変色の主な原因は、象牙細管の色素沈着のため、喫煙の習慣、色の濃い食事の頻度が高いと変色のリスクも高まります。
後戻りをした歯にウォーキングブリーチを繰り返し行うことも可能ですが、歯が脆くなるため、永続的な白さを望む場合、セラミックなどの人工歯での治療が選択肢となります。
効果には限界がある
ウォーキングブリーチによるホワイトニング効果には限界があります。また効果が弱く、色の変化がみられないこともあります。そのため、治療効果に満足いかない、または希望する白さが高い場合には、ホワイトコートやセラミッククラウンが検討されます。
歯の破損のリスクがある
ウォーキングブリーチは、複数回の処置によって歯の漂白効果がえられますが、その治療を繰り返す過程で歯が欠けたり、ヒビが入ったりする可能性があります。
歯の中に充填させた漂白剤が長期間密閉された状態が続くと、薬剤の漂白反応が原因でガスが発生することがあります。その場合、歯の中の圧力が高まったことで痛みがでる、歯にヒビが入りやすくなったり、割れたりするリスクがまれに起きます。
保険適用外の治療法
ウォーキングブリーチは高濃度の過酸化水素と過ホウ酸ナトリウムを使用するため、歯科医院による厳重な医薬品の管理と歯科医師にしか行えない保険適用外の治療です。また治療自体を行っていない歯科医院が多いのが実情です。
ウォーキングブリーチはこんな方におすすめ
- 神経が死んだ歯をできるだけ安価に残したい方
- 歯を削らずに(人工歯はを使わずに)歯の変色を治したい方
- 変色歯(無髄歯)による歯茎の黒ずみがみられる方
ウォーキングブリーチの流れ
ウォーキングブリーチをはじめる前に、対象とする歯に虫歯や細菌感染が起こっていないかを確認して、必要な処置を施します。
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1.カウンセリング
カウンセリング
直接お口の状態や全身状態を確認し、適応・不適応の確認をします。そのうえでウォーキングブリーチが患者様のご希望に合うものか、どの程度の白さをお求めか、後戻りの注意点や日常生活での注意点をご説明します。
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2.歯や歯茎、唇の保護
ウォーキングブリーチに使用する薬剤は刺激が強いため、治療対象の歯以外の歯や歯肉、唇が傷つかないようラバーダムとよばれるゴムやシリコン、ガーゼなどで保護します。
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3.薬剤を填入する入口の確保
歯の中心には、神経が存在している空洞があります。歯が黒くなる原因である、神経が死んでしまっている場合には、歯の裏から小さな穴を開けて神経治療を施します。その際に削る道具を使いますが、神経が死んでいるので麻酔も不要で痛みも感じません。
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4.歯の中の保護と漂白剤を填入し緊密に蓋をする
神経治療した歯は根の先にゴム材料が充填しますが、根の先の不必要な部分にまで拡散しないように、裏層材で緊密に蓋をし、ウォーキングブリーチの薬剤を填入するスペースを確保します。漂白剤を作ったスペースに必要量填入し、口の中に浸み出してこないよう緊密に樹脂で蓋をします。ここまでを1日で行います。治療時間は60分程度です。
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5.施術を複数回繰り返す
歯の状態により、1~2週間間隔で2~4回繰り返します。
ウォーキングブリーチのよくある質問
ウォーキングブリーチをする歯は神経がないため、神経のある歯にしか効果がでないオフィスホワイトニングやホームホワイトニングは、ウォーキングブリーチをした歯には効果がありませんが、それ以外の神経がある歯を白くするために併用することは可能です。
但し、どのホワイトニングも、白さを指定することはできないため、ウォーキングブリーチの歯の色と、それ以外の歯の色を完全に一致させることは難しく、その場合、セラミッククラウンやラミネートべニアといった人工歯を用いた治療との併用を選択肢とすることもあります。
ウォーキングブリーチの有無にかかわらず、歯は虫歯になる可能性があり得ます。特にウォーキングブリーチをする歯は神経がないため、虫歯になってもご自身で気づきにくいといった点では、虫歯になる可能性は高いともいえます。
そのため、虫歯予防が最も大切になってきます。具体的には、毎日の正しいセルフケア、そして定期的な歯科医院でのプロケアがおすすめです。
ウォーキングブリーチを行う歯は神経がないため、歯を強化するために空洞に土台を埋入します。この土台には、プラスチックに近いレジンを使用することもありますが、強度はやや低いため、より強度をもたせるためにファイバーポストというガラス繊維の土台を埋入することもあります。土台の種類によってメリットとデメリット、費用も異なりますので担当医とよく相談のうえ選択しましょう。
ウォーキングブリーチのページをご覧の皆様へ
ウォーキングブリーチは適応症が限られ、リスクのある治療法のため、最初の診断と治療説明が重要と考えます。しっかりとカウンセリングにて診察し、適応外の場合には、他の治療方法の選択肢もご説明します。
どの治療になるとしても、当院には各専門の歯科医師が在籍しておりますので、患者様の歯の状態、ご希望に合わせて、最善の治療をご提案させていただきます。
ウォーキングブリーチの治療概要
治療方法 | ウォーキングブリーチ |
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治療説明 | ウォーキングブリーチは、神経治療後の歯の変色を、歯の表面を保存しながら、歯の中から脱色する治療です。 |
治療の副作用(リスク) |
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治療期間 | 1か月 |
治療回数 | 2~3回 |
適応症例 | 神経治療済みの歯 |
ダウンタイム | なし |
カウンセリング当日の治療 | カウンセリングまで |
入院の必要性 | なし |
術後の制限事項 | なし |
不適応の症例 |
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