インビザラインのゴムかけの効果と装着期間やタイミング
インビザラインを用いた歯の矯正治療で改善するのは、歯の並び方だけはありません。
歯並びはもちろん、上下の咬み合わせや頭蓋骨に対する上顎・下顎の位置関係も改善していきます。それには、顎間ゴムを用いた「ゴムかけ」という処置が必須となってくるのです。
このコラムでは、インビザラインのゴムかけについて解説します。
このコラムを読むことで、インビザラインのゴムかけの効果と装着期間などについて理解でき、下記のような疑問や悩みを解決します。
こんな疑問を解消!
- ゴムかけって何のためにやるの?
- ゴムかけは、いつから始めて、いつまで続くの?
- ゴムかけをさぼったら、どうなるの?
インビザラインとは
インビザライン矯正とは、透明なマウスピース状の矯正装置を用いて行う矯正治療のことです。
マウスピースは自分自身で着脱可能なため、食事や歯磨きの際には外すことができます。また、矯正期間中の審美性に優れているため、非常に人気のある歯列矯正となっています。
そんなインビザラインでも、ワイヤー矯正と同様にゴムかけが必要な時期があります。まずは、このゴムかけとは一体何なのかをみていきましょう。
ゴムかけと、その効果
ゴムかけとは、ゴムの縮む力・元に戻ろうとする力を使って、マウスピースではかけられない矯正力を歯に伝える方法です。それによって歯の移動を促進し、咬合の改善を促していくのです。
ゴムかけを行うことによって、次のような効果が期待できます。
上下の歯の咬み合わせの改善
マウスピースは上下に分かれていますが、ゴムかけを行うことにより、上下の歯の咬み合う位置関係やバランスを調整し、咬み合わせを整えていくことができます。
上下顎の咬合関係の改善に加えて、頭蓋骨に対する歯列の位置も調整することで、唇の位置や唇を閉じた時の顔貌など、口元全体のバランスを整えていきます。
左右の対称性の調整
ゴムを指定された通りに正しくかけることにより、歯列の左右の対称性を向上させます。
歯の位置だけではなく、周囲の筋肉のバランスを整えることにも繋がります。
顎骨の成長および筋肉のバランスを適切な方向に促す
頭蓋骨に対する上下の顎の位置関係を整えます。それによって、顎骨の成長を正しい方向に促進させ、筋肉のバランスも調整していきます。
歯と歯の間に生じたすき間の改善
上顎内、もしくは下顎内での歯の移動や歯と歯の間のすき間を埋めるような力をかけていくこともあります。
歯列の移動の促進、矯正期間の短縮
マウスピースとゴムかけを併用することで、歯への矯正力がプラスされます。
それによって、歯の移動速度が促進され、矯正期間の短縮に繋がります。
ゴムかけの種類
ゴムかけには症例によって、様々な種類があります。
Ⅱ級ゴム:上顎前突症で使用
上顎歯列の前方と下顎歯列の後方にゴムをかけることで、上顎の歯を後方へ、下顎の歯列を前方へと移動します。
Ⅲ級ゴム:下顎前突で使用
上顎歯列の後方と下顎歯列の前方にゴムをかけることで、上顎の歯を前方へ、下顎の歯列を後方へと移動します。
垂直ゴム:開咬で使用
上下の歯にゴムを垂直にかけることで、咬んだ時の上下歯列間のすき間を改善していきます。
交叉ゴム:交叉咬合、鋏状咬合で使用
上下の同じ歯の表側と裏側に、咬み合わせをまたぐようにゴムをかけます。
上顎歯列が下顎歯列よりも外側(前方)に咬み込むような咬み合わせになるよう、歯列の改善をしていきます。
顎内ゴム:上顎内、もしくは下顎内で使用
1本だけ歯の移動が遅れている場合、補助的な矯正力として用いることもあります。
抜歯後などのすき間があるけれども、そのスペースに特定の歯を移動させたくない場合のストッパーとしての役割などでも、ゴムがけを用いることがあります。
ゴムかけの期間・開始のタイミング
ゴムをかける時期や、どのくらいの期間行うのかをみていきましょう。
開始時期
ゴムかけを行う時期は、症例によって異なります。
治療開始から早い段階でゴムかけを開始するケースもありますが、一般的には、ある程度歯並びが整ってくる治療中盤から後半にかけてゴムかけを行うケースが多い傾向にあります。
ゴムかけによって、どのような効果を期待するかによっても開始時期は異なってきます。
ゴムかけの期間
ゴムかけを行っている期間は、1か月程度の場合から半年以上というケースまでさまざまです。数か月間ゴムかけを行うケースが比較的多いといえます。
また、ゴムかけを行い、歯の移動速度を確認した上で期間を定めていくことなどもあります。
1日の中での装着時間
ゴムかけを行う期間は、マウスピースを装着している間はゴムかけも行うという考え方になりますので、1日20~22時間以上となります。
ゴムが伸びてしまうと、効果が失われてしまいますので、最低でも1日1回は新しいゴムと交換します。
ゴムかけの方法
ゴムをかける方法をみていきましょう。
- ❶矯正治療のゴムかけでは、直径3~10㎜程度の医療用の輪ゴムを用います。「顎間ゴム」「エラスティックゴム」と呼ばれ、太さや輪の大きさなど、様々な種類があります。
歯並びの状態やどのような目的で使用するかによって、太さや大きさを使い分けていきます。
必ず歯科医師に指定されたものを使用するようにしましょう。 - ❷ゴムかけが必要な段階になると、マウスピース、もしくは歯の表面に顎間ゴムをかけるためのボタンやフックを設置します。これは、金属製やレジン製など、素材や形状も様々です。
歯の表面にゴムかけを行う場合は、ゴムとマウスピースが干渉しないように、マウスピースにボタンカットという加工をしていきます。 - ❸ゴムをかける場合、まず片方のボタン(もしくは、マウスピースのフック)にゴムをかけ、ゆっくりとゴムを引っ張りながら、もう片方のボタンにゴムをかけていきます。指でゴムがかけにくい場合は、エラスティックホルダーという道具を用いてゴムをかけることをおすすめします。
また、交叉ゴムなど、ゴムかけが難しいケースの場合は、お口の外であらかじめマウスピースにゴムをかけ、その状態でマウスピースを装着するという方法もあります。
ゴムは毎日、自分でかける必要があります。初めてゴムかけを行う場合は、歯科医院で何度か練習しておくと良いでしょう。最初は難しく感じるでしょうが、1~2週間で慣れてきますので、ご安心ください。
ゴムかけの注意点
ゴムかけの際に注意すべきこと、忘れた時の対処法をみていきましょう。
1日1回必ず交換する
ゴムは、伸縮を繰り返すことで伸びていきます。ゴム自体が伸びきってしまうと矯正力が低下してしまいますので、必ず1日1回は新しいものと交換するようにしましょう。
「寝る前の歯磨き後にゴムを新しいものに交換する」など、自分で交換のタイミングを決めておくと忘れにくくなります。また、ゴムが切れた場合や緩んできたなと感じる場合も、新しいものに交換していきます。
その際は左右のバランスが損なわれないよう、左右共に交換するようにしましょう。
ゴムをかける場所を確認する
ゴムを誤った場所にかけてしまったり、指示されたゴム以外のものを使用したりすることがないように気を付けましょう。
誤った方向に歯が動いてしまったり、意図しない力が歯に加わってしまったりすると、計画通りに歯が移動しなくなり、治療期間が長くなる可能性などが考えられます。
予備のゴムを準備しておく
着脱の際や大きく口を開けた時などに、ゴムが切れてしまうことがよくあります。外出の際には、予備のゴムを準備しておくようにしましょう。
ホルダーを使用している場合は、ホルダーも忘れないようにしましょう。また、片方のゴムだけ切れてしまった場合でも、両方のゴムを交換します。力のかかり具合が左右で均等になるようにすることも、非常に大切なのです。
ゴムが目立ってしまう場合は
ゴムをかける位置は、症例によって異なります。目立つ位置にかけなければいけない時や仕事の都合などでゴムがどうしても気になる場合は、自己判断で外さず歯科医師に相談しましょう。
目立ちにくい、透明なゴムを用いるなど、ゴムの種類や装着するタイミングを調整できる場合もあるでしょう。自己判断で外してしまうよりも、必ず歯科医師と相談して対策を講じていくことをおすすめします。
痛みへの対処
痛みが強い場合は、まずはゴムをかける位置やかけ方が間違っていないか確認します。それでも強い痛みが続くようであれば、歯科医師に相談するようにしましょう。
ゴムかけを、長期間忘れてしまったら?
もし、ゴムかけを忘れてしまった場合は、出来るだけ早くゴムをかけるようにしましょう。外出先などでゴムが切れてしまった場合も、出来るだけ早くにゴムを付け直すよう心掛ける必要があります。
ゴムかけを忘れたまま、数日経過してしまった場合は、歯科医師に相談するようにしましょう。
ゴムかけも、マウスピース同様、歯を移動させる重要なツールです。忘れてしまうと、治療計画の変更が必要になることもあります。ゴムかけとマウスピースは常にセットと考えて、しっかりと装着していくようにしましょう。
【まとめ】インビザラインのゴムかけの効果と装着期間やタイミング
インビザラインのゴムかけの効果と装着期間について解説しました。
このコラムでは、下記のようなことが分かったのではないでしょうか。
ここがポイント!
- インビザラインのゴムかけとは、咬み合わせや上下の歯並びの位置関係、左右のバランスなどを改善していくために行う
- ゴムかけを行う時期や期間は症例によって異なるが、矯正治療中盤から後半にかけて、数か月間行うケースが多い
- ゴムかけの期間中は、常にマウスピースと併せてゴムかけを自分で行う
- ゴムは毎日新しいものに交換していく
- ゴムかけを忘れてしまった場合は、出来るだけ早くゴムを装着する
- ゴムかけを忘れたまま数日経過してしまった場合は、歯科医師に相談する必要がある
インビザラインでは、自己管理力が求められます。
マウスピース同様、ゴムかけも、指示された通りに装着していくようにしましょう。
ゴムかけを行っている間は、大きく口を開けることができないため、大きな口をあけて笑ったり、大胆にあくびをすることが出来なかったり・・・不便なこともあるかもしれません。
しかし、しっかりとした咬み合わせを得ること、理想的な口元を作り上げていくためには、ゴムかけは欠かせないツールでもあります。
自分の目指す治療結果が得られるよう、頑張っていきましょう。
南青山矯正歯科クリニックでは、インビザライン矯正におけるゴムかけを開始するタイミングは患者様のスケジュールも考慮のうえ、相談しながら進めていきます。
また、ゴムかけが初めての方が多いため、来院時にしっかりと付け方の指導をさせていただきますのでご安心ください。