インビザライン矯正で抜歯が必要な症例とそのタイミング
インビザラインでの矯正治療は歯の平行移動が苦手なため、大きな移動を必要とする症例には不向きといわれています。
実際、インビザラインが得意とするのは抜歯が不要な症例ですが、条件によっては抜歯をともなう症例にも対応できます。
この記事では、矯正で抜歯が必要になる場合と、抜歯をともなうインビザライン矯正のプラン例について解説します。
この記事を読むことで、矯正治療で抜歯が必要となる代表的な症例や抜歯のタイミング、インビザライン矯正で抜歯をともなうケースなどを理解でき、下記のような疑問や悩みを解決します。
こんな疑問を解消!
- 矯正治療で抜歯が必要となる例
- 抜歯するタイミング
- 抜歯をともなうインビザライン矯正の例
抜歯が必要なケース
矯正で抜歯が必要になるのには、いくつかのパターンがあります。
代表的なものを見ていきましょう。
スペースが足りない
矯正治療において、スペース不足による抜歯は最も多い要因です。
歯並びに問題がある以上、多少なり歯の並ぶスペース不足があることは多いですが、スペースが足りないイコール抜歯ではありません。
矯正治療で抜歯が必要になるのは、歯の並ぶエリア(歯列)と並ばせたい歯の幅の不調和が一定以上である場合とされています。
矯正学ではこの不調和のことを、アーチレングスディスクレパンシーと呼びます。
使用する矯正方法や目指すゴールにより多少の変化はありますが、この不調和(スペースの不足)が4㎜を超えると、抜歯を必要とする矯正になることが多いです。
この点は、ワイヤー矯正でもマウスピース矯正でも同じです。
次に、スペース不足により抜歯になる例を見てみましょう。
叢生(乱杭歯)
歯が並ぶスペースが不足したため、歯が前後に重なりあった状態です。
ごく軽度であれば非抜歯で対応できることもありすが、元々並ぶ場所がないため、並ばせるスペースを作るために抜歯が必要になることが多いです。
上顎前突(出っ歯)
歯が原因の上顎前突の場合、前歯を後ろに引っ込めるためのスペースが必要になります。
このスペースを確保するために、第一小臼歯を抜歯することが多いです。
これを非抜歯で対応しようとすると、口元がくちばしのように突き出た仕上がりになってしまう可能性があります。
骨格が原因の場合は状況が異なりますが、上下の咬み合わせのバランスをとるために抜歯となることもあります。
捻転歯・転位歯
捻転歯とは、本来の歯の向きからねじれるように回転して生えている歯のことをいい、転位歯とは、歯列からはみ出した位置にある歯のことをいいます。
生まれつき、ねじれた向きやずれた位置に歯が作られてしまうこともありますが、歯が生える段階でスペースが足りず、ねじれた向きで生えたり、はみ出した位置に生えざるを得なかったケースが多くあります。
捻転の改善や転位歯を歯列に戻そうとすると、大きなスペースが必要になることが往々にしてあり、抜歯を伴う矯正になることが多くなります。
歯が大きすぎる
上に挙げた例と重なる部分がありますが、並べる歯列のスペースに対して歯が大きすぎるため抜歯が望ましくなることがあります。
歯列拡大やディスキングで対応できることもありすが、非抜歯にこだわった結果、かえって出っ歯に仕上がってしまうということもあります。
親知らずが邪魔をする
矯正をするにあたって、歯の移動を妨げるものがあれば矯正治療開始前に取り除くのが原則です。
親知らずがあることで、一番後ろの歯を動かすのに支障をきたす場合や、治療後に親知らずが生えそうな場合、親知らずの抜歯を行います。
過剰歯・埋伏歯がある
本来生える歯よりも余分に作られてしまった歯(過剰歯)や、歯の位置関係など様々な理由で生えてこれず骨の中に埋もれている歯(埋伏歯)がある場合、矯正治療をするうえで骨の中で障害物となってしまうため、矯正治療開始前に抜歯の対象となります。
埋伏歯はその歯の種類や位置によっては、歯肉を切開して引っ張り出す開窓(かいそう)牽引という手法で矯正治療の対象とすることもあります。
虫歯や歯周病で保存不可能である
治療をすれば保存可能な歯は、先に治療を済ませてから矯正治療に入るのが原則ですが、重度の虫歯や歯周病で保存不可能と判断された歯は矯正治療開始前に抜歯します。
抜歯や歯周病の影響で骨がなくなっているところがあるとその部分には歯を動かすことができないため、矯正治療開始前にできるだけ骨の回復ができるように、なるべく早いタイミングで抜歯することになります。
抜歯のタイミング
では矯正治療で抜歯が必要と診断された場合、どのタイミングで抜歯をするのでしょうか?
矯正治療開始前が基本
矯正治療に関わる抜歯は、基本的には矯正治療開始前に行います。
抜歯を必要とする歯が、歯を動かす際の障害物になってしまったり、抜歯後のまだ骨が治っていないところには歯は動けないため、先に行う必要があります。
矯正治療後に抜く場合もある
基本的には抜歯は矯正治療開始前に済ませますが、親知らずに限っては矯正治療後の抜歯でもよい場合があります。
歯の生えてくる向きや、でき具合によって矯正治療開始時点では抜歯不要と判断された親知らずは、矯正治療中または矯正治療後に必要と判断されたときに抜歯となります。
抜歯を伴うインビザライン矯正
インビザライン矯正で抜歯を伴うケースでは、どのようになるのでしょうか。
パターンで分けて見てみましょう。
閉鎖するスペースが小さい場合
たとえば、全体的にきれいに並んでいるものの、転位で歯列から完全に飛び出した歯を抜歯し歯列を整える場合です。
抜歯後に得られるスペースが小さい場合など、抜歯を伴うケースでもインビザライン単独で治療できる場合があります。
ワイヤー矯正との併用
歯を動かす十分なスペースを確保するために抜歯を行った場合、その後の歯の移動は歯の平行移動(歯体移動)をメインにするため、インビザライン単独で十分な歯の移動を行うには厳しいことが往々にしてあります。
このような場合、歯体移動を必要とする大きな移動はワイヤー矯正で行い、インビザラインでできるところまで治療が進んだら、インビザラインに切り替えるということも可能です。
ワイヤー矯正は大きな移動が可能ですが、装置が目立ったり異物感が強くなります。
インビザラインは、ワイヤー矯正ほど大きな移動はできませんが、目立たず異物感を少なくできます。
治療の段階によって、それぞれの利点を生かした組み合わせで矯正治療が可能です。
【まとめ】インビザライン矯正で抜歯が必要な症例とそのタイミング
矯正治療で抜歯が必要になる場合や抜歯のタイミング、抜歯をともなうインビザライン矯正の例などを解説しました。
この記事では、下記のようなことが分かったのではないでしょうか。
ここがポイント!
- 矯正治療では、スペース不足が4㎜を超えると抜歯が必要と判断される場合が多い
- 抜歯が必要になる例としては、叢生、上顎前突、捻転歯や転位歯、歯のサイズが大きすぎる場合などがある
- 歯列矯正では、親知らず、過剰歯、埋没歯が抜歯対象になる場合もある
- 虫歯や歯周病によって、保存不可能と判断された歯も抜歯対象となる
- 抜歯は矯正治療開始前が基本だが、親知らずに限っては矯正治療中や矯正治療後に抜歯することもある
- 抜歯をともなうインビザライン矯正の例としては、閉鎖するスペースが小さい場合やワイヤー矯正と併用する場合などがある
矯正治療では、見た目と機能を兼ね備えた仕上がりのために抜歯が避けられないこともあります。
インビザラインは非抜歯ケースが得意ですが、条件によっては抜歯をともなう症例にも対応可能ですし、ワイヤー矯正と組み合わせることで治療の幅はさらに広がります。
南青山矯正歯科クリニックでは、抜歯をともなう歯列矯正にも対応しています。抜歯が必要といわれたけれど、インビザライン矯正も検討したい、インビザラインでどこまで矯正できるか知りたいといった方は、ぜひ一度当院の診察にてご相談ください。女性歯科医師が丁寧に対応させていただきます。