噛み合わせや歯並びが悪いと頭痛の原因になる?
近年、咬むことと健康との関係が指摘され、関心が高まってきています。咬み合わせや歯並び、それに関わる諸症状は以前から注目されており、原因や治療の研究がなされています。
それでは、咬み合わせや歯並びが悪いと、体にどのような影響が及ぶのでしょうか。
この記事では、咬み合わせや歯並びと頭痛の関係について解説します。
この記事を読むことで、歯が関係する頭痛や咬み合わせが頭痛や肩こりに及ぼす影響などを理解でき、下記のような疑問や悩みを解決します。
こんな疑問を解消!
- 歯が関係する頭痛とその特徴
- 咬み合わせが頭痛や肩こりに及ぼす影響
- 咬み合わせと咬合関連症の関係
歯が関係する頭痛
頭痛にはさまざまな原因があり、国際的な分類(国際頭痛分類第3版(ICHD-3))が公開されています。
頭痛は一次性頭痛と二次性頭痛に分類され、歯が関係する頭痛は二次性頭痛のうち「頭蓋骨、頸、眼、耳、鼻、副鼻腔、歯、口あるいはその他の顔面・頸部の構成組織の障害による頭痛または顔面痛」に分類されています。
これによると、歯が関係する頭痛は虫歯や虫歯から続く炎症、顎関節症、その他のいずれかになります。
顎関節症による頭痛の場合、炎症による頭痛と緊張性頭痛のような筋肉による頭痛があります。
いずれにしても、歯が関係する頭痛はこめかみの辺りや顔に近い部分で起こることが多くなります。
咬み合わせからくる頭痛や肩こり
歯が関係する頭痛は大きく3種類ということをお伝えしましたが、咬み合わせや歯並びが頭痛や肩こりなどの症状に影響することはないのでしょうか?
確かに、咬み合わせが直接頭痛を引き起こすことはありません。しかし、咬み合わせが頭痛の原因に関与していることは考えられます。
たとえば、歯を抜いた後に隣の歯が傾いてきたり(傾斜)、咬み合わせる相手の歯がスペースを埋めるように出てきたり(挺出)することがあります。
これらの歯の移動によって、顎を動かすときの上下の歯の当たりが変わり、顎関節にダメージを与えたり、顎を動かす筋肉に余計な負荷を加えることになることがあります。その結果、顎関節症となり、随伴症状としての頭痛が起こる可能性があります。
また歯並びが悪い場合も軽度のものであれば、さほど問題になることは多くないですが、咬み合わせのアンバランスや不安定さから、安定するところを探して無意識のうちに食いしばりや歯ぎしりをしてしまう可能性があります。
食いしばりや歯ぎしりは顎の骨や顎関節、筋肉にダメージを与え、顎関節症による頭痛の原因になることが考えられます。また、食いしばりや歯ぎしりによって閉口筋だけでなく、開口筋群や首や肩の筋肉も影響を受けます。
持続的または断続的ながら継続的に筋肉の緊張が続くことで、こめかみのあたりの頭痛や肩こりなどの症状が出ることが予想されます。
このように、咬み合わせは頭痛や肩こりの原因になり得ると言えます。
咬み合わせとその他の症状
それでは、咬み合わせは頭痛や肩こり以外の症状と関連するのでしょうか?
咬み合わせの不調和とそれに伴うと感じられる諸症状で咬合違和感症候群というものがあります。
咬合関連症って?
咬み合わせと原因不明の頭痛や全身とに関係があると主張する個人や団体があり、この中には歯科医師だけでなく、整体やカイロプラティックなど歯科以外の分野の者もいます。
それらによると咬合関連症というものがあり、咬み合わせによって頭痛、肩こり、手足の運動、知覚障害、難聴、めまい、立ちくらみなど広範にわたる症状があり、頭の重心が変化することで頸椎に歪みを生じるとしています。
しかしながら、間接的に咬み合わせが関わる頭痛や肩こりは考えられるものの、咬み合わせがそのような広範な症状を引き起こすとする有効なエビデンスはありません。
咬み合わせと頸椎のゆがみに限らず、よく目にするものでは「○○による骨盤のゆがみ」なども有効なエビデンスはなく、関係について明らかなことを言えるものではありません。
咬合関連症というものについても広くコンセンサスを得られたものではなく、そういう考えもあるというものに留め置くのが妥当といえます。
【まとめ】噛み合わせや歯並びが悪いと頭痛の原因になる?
歯や咬み合わせが、頭痛や肩こりに及ぼす影響などを解説しました。 この記事では、下記のようなことが分かったのではないでしょうか。ここがポイント!
- 歯が関係する頭痛は、虫歯や虫歯から続く炎症、顎関節症に関連するものなどがある
- 歯が関係する頭痛は、こめかみの辺りや顔に近い部分で起こることが多い
- 咬み合わせが直接頭痛を引き起こすことはないが、咬み合わせによって生じる顎関節や筋肉へのダメージが頭痛や肩こりの原因になる場合がある
- 「咬合関連症」とは、咬み合わせが関係すると主張されることのある諸症状のこと
- 咬合関連症に関する有効なエビデンスはない
咬み合わせや歯並びによって、顎を動かす筋肉や顎関節が疲労したり、ダメージを受けることで頭痛が起こることがあります。
しかし、咬み合わせや歯並びの乱れがあれば必ず起こるわけではなく、あくまで要素のひとつに過ぎません。
また、咬み合わせが関係すると主張されることのある諸症状については、十分な根拠のあるものとは言い難いのが現状です。
咬み合わせとそれに関わる症状は、さまざまな要因が複雑に関係している場合も考えられます。頭痛が気になるときは、歯科医師にも助言を求めてみると良いでしょう。
南青山矯正歯科クリニックには、歯列矯正によって歯並びだけでなく咬合も改善したことで、頭痛や肩こりがなくなったといったお声もいただいております。
歯並びや噛み合わせが気になるといった方は、ぜひ一度、女性歯科医師の診察・相談を受けにいらしてみてください。丁寧に診断させていただきます。
参考文献
松香芳三他. 咬合違和感の診断と対処法. 日補綴会誌. Ann Jpn Prosthodont Soc 10 : 129-133, 2018. https://www.hotetsu.com/s/doc/irai2018_2_07.pdf, (参照 2021-12-14)