インビザラインの保定装置「ビベラリテーナー」と他のリテーナとの違い
インビザライン矯正で歯の移動(動的治療)が終わった後は、ワイヤー矯正と同じく後戻りを防ぐために「リテーナー」という保定装置を使います。
また、インビザラインでは特に専用の「ビベラリテーナー」というものを使うことがあります。
この記事では、インビザラインの保定装置「ビベラリテーナー」と、ワイヤー矯正などでも用いる、一般的なリテーナーについて解説します。
この記事を読むことで、ビベラリテーナーの特徴や他のリテーナーとの違いなどを理解でき、下記のような疑問や悩みを解決します。
こんな疑問を解消!
- ビベラリテーナーの概要
- ビベラリテーナーの特徴
- ビベラリテーナーと他のリテーナーとの違い
ビベラリテーナーとは
矯正の動的治療が終わった後は、後戻りや意図しない歯の動きを防ぐための処置(保定)としてリテーナー(保定装置)というものを装着します。
ビベラリテーナーは名前の通りリテーナーの一種で、インビザラインのアライナー(矯正用マウスピース)と同じような透明なマウスピースです。
インビザラインを提供しているアライン社によるもので、インビザラインのアライナーと同じように装着することで動的治療後の保定をしてくれます。
ビベラリテーナーの特徴
ビベラリテーナーには独自の特徴があります。
ひとつずつ見てみましょう。
クリンチェックのデータから作れる
通常、リテーナーを作るときは動的治療終了時に歯型採りをして石膏模型を作り、その模型上で作ります。従来のワイヤー矯正では動的治療終了時の歯並びを治療開始前に知ることはできなかったため、この工程は必須でした。
歯型採りのときにオエッとなりやすかったり、苦手な方にとっては苦しい工程になってしまっていました。
ビベラリテーナーはインビザライン治療の最初や途中で修正したクリンチェックのデータから直接作ることができ、患者さんの負担を軽くすることができます。
わずかな後戻りにも対応できる
リテーナーで保定をしていても、後戻りや意図しない歯の動きを100%抑えられるわけではありません。そのため、ワイヤー矯正では動的治療時にわざと後戻りを見越した歯並びにすることもあります。
ビベラリテーナーは、インビザラインのアライナー1枚分の範囲であれば後戻りの補正もできるとされ、保定と後戻りなどの補正を同時にすることが期待されます。
耐久性がある
ビベラリテーナーはインビザラインの動的治療で使うアライナーと比べて30%耐久性が高くなってます。その分、使用感としては硬めになっており、装着時の締めつけ感を強く感じることがあります。
他の着脱式より目立たない
着脱式のリテーナーは、リテーナーが動いたり外れたりしないようにするために、ワイヤーや入れ歯のようなツメを使ったり、厚みのある素材を使います。そのため、どうしても口を開けたときに何か入っていることがすぐにわかってしまいます。
ビベラリテーナーは、インビザラインのアライナーと見た目がほとんど変わらないため、目立たず使うことができます。
固定式より清掃性が高い
固定式のリテーナーは24時間ずっと口の中に装置があるため、装置のまわりが磨きづらく、歯石が付いたり、装置のまわりで虫歯を作ってしまうリスクがあります。
ビベラリテーナーは取り外してしまえば歯のまわりに残るものは何もないため、歯を磨きやすく、口の中を清潔に保ちやすくなります。
ビベラリテーナー以外の保定装置
ビベラリテーナーはインビザライン治療専用のリテーナーですが、インビザライン治療ではビベラリテーナー以外のリテーナーが使えないというわけではなく、従来型のリテーナーも使用できます。
ここからはビベラリテーナー以外のリテーナーについても紹介します。
リテーナーは大きく固定式と着脱式(専門的には可撤式と呼びます)に分けられ、考え方により形状にバリエーションがあります。
固定式リテーナー
ご自身では取り外しのできない、固定式のリテーナーからみていきます。
ボンデッドワイヤー
犬歯(糸切り歯)から犬歯の裏側に、ワイヤーを歯科用のボンドで固定する保定方法です。
近年よく見られる方法で、上顎、下顎どちらでも使用することができます。
上下ともボンデットワイヤーにすることも、上は着脱式の装置にして、下はボンデットワイヤーにするなど他の保定手段と組み合わせて使うこともできます。
前からは保定装置が入っていることがわからないというメリットがありますが、歯と歯をお互いにボンドで繋いで固定してまうため、磨きづらくなってしまいます。
特にワイヤーと歯茎との間の汚れがとりづらくなり、歯石がついてしまい、歯茎に炎症を起こしてしまうことがあります。
リンガルアーチ
上顎の左右の第一大臼歯(6歳臼歯)に金属製のバンドを装着し、バンドに着けたワイヤー取り付け用スロットにワイヤーを入れ、ワイヤーを介して左右の第一大臼歯を繋ぎ、歯の移動を抑えることを目的とした装置です。
基本は動的治療中に奥歯の移動を抑えるために用いる装置ですが、動的治療終了後も撤去しないでそのまま口の中に残して保定装置として利用することもあります。
バンドは歯にセメントで固定されるのと、スロットまわりが磨きづらい箇所になるため、虫歯を作らないように注意が必要になります。
着脱式リテーナー
ビベラリテーナーと同様に、ご自身で取り外しが可能なリテーナーにもいくつかの種類があります。
ベグタイプリテーナー
着脱式の中で最もメジャーなリテーナーです。
上顎のすべての歯の裏側をレジン(プラスチック)で支えるように覆い、表側は全ての歯に接触するように太めのワイヤーを渡します。
ビベラリテーナーと同じく、固定式の難点である清掃性は装置を外してしまえば解消されます。
表にはワイヤーが通っているためリテーナーを装着していることがわかるのと、裏側のレジンが、ある程度厚みと幅が必要になるため、使い始めのうちは入れ歯のような違和感が出ることがあります。
ホーレータイプリテーナー
基本形はベグタイプリテーナーと変わりませんが、ベグタイプでは表のワイヤーが全ての歯と接触し支えていますが、ホーレータイプでは犬歯から犬歯の6本のみと接触します。
このベグタイプとの差は、歯全体のうち特に前歯6本の動きを抑えられれば奥歯の動きも抑えられるという発想からきており、先ほど紹介したボンデットワイヤーや次に紹介するスプリングリテーナーと共通するものです。
スプリングリテーナー
犬歯と犬歯に入れ歯と同じようなツメ(クラスプ)をかけ、その間の前歯4本にワイヤー入りのレジンで表と裏から押さえる装置です。
歯のない透明な部分入れ歯のような形をしたリテーナーで、下顎に使用します。
前歯4本を表と裏からがっちり押さえる形になっているため、前歯4本に限りビベラリテーナーと同様に多少の後戻りに対応することができます。
上顎はベグタイプやホーレータイプのリテーナーで、下顎はスプリングリテーナーやボンデットワイヤーの組み合わせで使用することも多いです。
トゥースポジショナー
マウスピース型のリテーナーです。
ビベラリテーナーのような薄型のものではなく、厚みと大きさのある、ボクシングのマウスピースのようなソフトタイプの上下一体型のマウスピースです。
装置自体が大きく違和感が強いことと、使用条件が厳しいため使われる頻度は少ないです。
【まとめ】インビザラインの保定装置「ビベラリテーナー」と他のリテーナとの違い
インビザラインの保定装置「ビベラリテーナー」の特徴や、他のリテーナーとの違いなどを解説しました。
この記事では、下記のようなことが分かったのではないでしょうか。
ここがポイント!
- ビベラリテーナーはリテーナーの一種で、インビザラインを提供しているアライン社独自の保定装置
- ビベラリテーナーはクリンチェックのデータから作れるため、リテーナー製作時の患者負担が少ない
- ビベラリテーナーは、わずかな後戻りにも対応する
- ビベラリテーナーは耐久性が高く、ほかの着脱式リテーナーに比べて目立たない
- ビベラリテーナーは一般的なリテーナー同様に、固定式リテーナーより清掃性が高いというメリットがある
- 従来式からある固定式リテーナーには、ボンデッドワイヤーやリンガルアーチなどがあるが、いずれも口腔内の清掃がしにくいというデメリットがある
- ベグタイプリテーナー、ホーレータイプリテーナー、スプリングリテーナー、トゥースポジショナーなどは、ビベラリテーナーと同じように着脱が可能
矯正治療後に後戻りや思わぬ歯の移動を防ぐためのリテーナーには様々な種類があります。中でもビベラリテーナーはインビザライン独自のリテーナーですが、適応や目的に応じて他のリテーナーを使ったり、両方を組み合わせて使ったりすることも可能です。
治療開始前や治療初期の方にはピンとこない話かもしれませんが、治療の目途が立ってきた頃に参考にしていただければと思います。
南青山矯正歯科クリニックでは、ビベラリテーナーのご案内も可能ですが、患者様の歯列状況や生活習慣に合わせて、他の保定方法もご提案させていただいております。
リテーナーや保定期間などについて疑問やご不安がありましたら、事前の診察にてご相談いただければと思います。女性歯科医師が、丁寧にわかりやすく回答させていただきます。