リテーナー(保定装置)の目的と注意点
ワイヤー矯正やマウスピース矯正などの歯列矯正治療の終了後、美しく整えられた歯並びをキープする(保定といいます)のはとても大切なことです。この理想の歯並びの維持をサポートするのが、「リテーナー(保定装置)」です。
この記事では、歯列矯正後に必須となるリテーナーについて解説します。
この記事を読むことで、リテーナーの目的や特徴、注意点などを理解でき、下記のような疑問や悩みを解決します。
こんな疑問を解消!
- リテーナーの目的
- リテーナーの装着時間と使用期間
- リテーナーの種類
- リテーナー使用中の注意点
リテーナーとは
リテーナーの装着期間と時間を守ることで、歯列矯正治療が終了した後の歯並びの状態を維持することができます。
リテーナーの目的について
歯列矯正治療の後の大きな問題の一つが「後戻り」です。歯列矯正治療はワイヤーやゴム、マウスピースの押す力などで歯を動かしていますが、歯がその場所で落ち着くまでの間、元の位置に戻ろうとする動きであったり、歯が動きやすい方向へと動くことがよくみられます。
歯を動かした後は、その周囲の骨や歯肉がしっかりと固まるまでの間、その場所にとどまるようキープするという役目がリテーナーにはあります。
使用期間・装着時間について
リテーナーを外すと歯は元の位置に戻ろうとするため、できるだけ長い時間装着しておく必要があります。1日のうち、できるだけ日中・夜間を含め装着することをおすすめしています。
寝ている間は、無意識のうちに歯をくいしばったり、歯ぎしりをしています。寝ている間は無意識であるためにその力はとても強く、歯列矯正直後の歯にとっては、歯の後戻りのみならず、歯の周囲の骨に強い力で衝撃を与えるため、歯周病や顎関節症などの原因になります。歯を動かさないようにするためには、リテーナーは寝ている間もできるだけ装着していることが理想です。
最近では、昼間の間でも無意識のうちに食いしばったりするTooth Contacting Habit(TCH)という習癖も明らかになってきており、このTCHも夜間の歯ぎしり、食いしばりと同じ影響があるといわれています。
リテーナーの終了時期については、歯の周囲の骨や歯肉がしっかり強固に完成した時期が目安となります。これは矯正歯科医が画像検査や後戻りがないことなどを判断してから指示をします。
リテーナーの種類
ホーレータイプ、ベッグタイプ、ソフトリテーナーという3種類のタイプがあります。
可撤式
ホーレータイプとベッグタイプは歯の位置を固定するプラスチック(レジン)の部分と、ワイヤーの部分からなります。取り外すことができるため、歯磨き時に外してきれいに管理することができます。
ソフトリテーナーは、やや柔らかい素材でできたマウスピースのような形で歯全体を覆います。これも食事時は外して歯磨きまで行い、その後の時間は装着しておくようにします。
固定式
固定式のリテーナーは、主に下顎の前歯の裏側に、細いワイヤーを透明なレジンという素材で貼り付けます。
隣の歯がなくなると、歯は前に倒れるように動きます。この倒れるような力は、最終的に一番真ん中にある歯(中切歯)に一番力がかかることになります。特に中切歯が少しでも回転するような動きになると、それを後押しするような力が中切歯にかかってしまい、どんどん歯ならびが乱れてきます。このような動きでせっかく並べた歯並びを乱れさせてはいけません。そのためにこの固定式のリテーナーを装着します。
歯磨きが多少しにくくなりそうに思いますが、下顎の前歯は歯の形の問題から、もともと歯石がつきやい場所のひとつです。そこを埋めてワイヤーを装着しますので、歯石がつきにくくなる方もいます。
リテーナーについて注意すること
取り外し式のリテーナーは、レジンというプラスチックの素材とワイヤーでできています。
破損したままにすると、歯肉を傷つける
リテーナーの使用中に一部にひびが入ったり、割れたり、欠けたりすることがあります。割れたままにすると、リテーナーとして歯を固定する力が弱くなったり、また欠けた部分が歯肉や舌に当たって傷つける危険性があります。
もし割れたりした場合はそのままにせず、すぐに受診して、修理してもらいましょう。その場で修理することもありますが、激しく損傷した場合は作り変えが必要になることもあります。
紛失したまま、リテーナーをはずす時間が長いと、後戻りがおきる危険性がある
取り外し式のリテーナーをお使いの方に時にあるのですが、歯磨きした後に外したままで過ごしてしまい、何かと間違って一緒に捨ててしまったり、紛失したりしてリテーナーを装着してない時間が長いと、後戻りをしだす可能性があります。見当たらない場合は早めに受診して、再度リテーナーを作成してもらいましょう。
可撤式リテーナーは歯磨きの際に外して掃除
取り外せるリテーナーは、装置と歯、歯ぐきの間に食べかすが溜まりやすくなります。食べかすがプラークとなり、その残留による口臭、虫歯、歯肉炎、歯周炎など、様々な悪影響があります。
矯正歯科医院では、歯科衛生士によって普通のブラシのみならず、ワンタフトブラシ、デンタルフロスなどを使っての歯磨きについて指導されると思いますが、歯磨きの時には取り外せるリテーナーは外して歯磨きを行い、リテーナーもきれいに磨いてからまた装着しましょう。外出中などであまり時間がない時は、リテーナーを外してうがいをし、リテーナーも水洗いして装着するだけでも構いません。
【まとめ】歯列矯正後に使用するリテーナー(保定装置)の目的と注意点
リテーナーの目的や特徴、使用時の注意点などを解説しました。
この記事では、下記のようなことが分かったのではないでしょうか。
ここがポイント!
- リテーナーの目的は、歯列矯正で整えた歯並びの「後戻り」を防ぐこと
- リテーナーはできるだけ長い時間装着しておく必要があるため、担当医の指示に従い日中・夜間を含め装着する
- リテーナーは、移動させた歯の周囲の骨や歯肉が強固に完成する時期まで装着
- リテーナーには可撤式と固定式があり、可撤式には「ホーレータイプ」「ベッグタイプ」「ソフトリテーナー」の3種類がある
- リテーナーを破損・紛失した場合は、早めに修理または再作成が必要
- 可撤式リテーナーは、歯磨きの際に外してきれいに掃除してから装着
リテーナーは、歯列矯正治療の効果を維持するためにとても重要な保定装置です。したがって、リテーナーを外すまでが歯列矯正だと言えます。歯科医院でリテーナーや口腔内の清掃状況を定期的にチェックしてもらい、良好な歯並びを維持しましょう。
南青山矯正歯科クリニックでは、行った歯列矯正や患者様の状況に応じて、担当の女性歯科医師が最適なリテーナーをご案内させていただきます。
参考文献)
Fumiaki Sato, et al. Teeth contacting habit as a contributing factor to chronic pain in patients with temporomandibular disorders.J Med Dent Sci 2006; 53: 103–109
G J Shefter, et al. Occlusal Relations and Periodontal Status in Human Adults. J Periodontol. 1984 Jun;55(6):368-74.