目立たない、そしてワイヤーがいらない歯列矯正として脚光を浴びているマウスピース矯正ですが、失敗やトラブルになるケースも目立つようになってきました。
今回は新しい手法であるマウスピース矯正の失敗例と、失敗しないためにはどうしたらいいかについてお伝えしたいと思います。
目次
マウスピース矯正での失敗例
矯正治療の失敗にはさまざまなものがありますが、マウスピース矯正の失敗例としてよくあるものを挙げたいと思います。
正中があわない
ものの真ん中、特に左右の中心線を正中と呼びます。
顔の正中と歯列(歯並び)の正中が合わず、顔と歯の位置関係がずれて見えるケースがあります。顔と歯列の正中の位置そのものは合っているものの、歯の傾きが左右で異なるため顔が歪んで見えるケースもあります。
咬み合わせがおかしい、奥歯が沈んだ
治療は終了したけれど、奥歯がしっかり咬み合った感じがしないというケースが多くあります。
咬み合わせのチェックをしてみると本来なら当たって欲しいポイントで当たってくれていないことが判明するケースもあります。
そのほかに、治療の途中で奥歯が沈み込んでいき咬み合わなくなるケースや、前歯だけが当たるようになってしまったケースもあります。
顎関節症になった
マウスピース矯正はワイヤー矯正と異なり臼歯(奥歯のこと)の咬み合わせの面まで覆うため、アライナー(矯正用マウスピース)を入れている間はアライナーを外した本来の咬み合わせとは異なる咬み合わせになります。
そのため、顎の関節にも本来とは異なる力が加わり顎関節症になってしまうケースがあります。
先述の咬み合わせがおかしくなってしまったケースで、顎関節症を併発してしまう場合もあります。
追加費用がかかった
さまざまな理由で当初の治療計画からの変更が必要になり、新しいアライナーを作ることになるなどして追加費用がかかることになり、トラブルになったケースがあります。
追加費用自体は必ずしも治療の失敗とは言えませんが、その中には失敗の結果といえるものがあります。
なぜ失敗してしまうのか?
いま見てきた失敗例は一部のものですが、なぜこのような失敗が起きてしまうのでしょうか?
患者の協力度不足
マウスピース矯正の失敗でよくある原因です。
システムにより差はありますが、一般的なマウスピース矯正は1日20時間以上の装着時間が必要となります。
そのため、十分な装着時間が得られない場合は予定通りの歯の移動ができず、計画のやり直しなどが必要になることがあります。
また、マウスピース矯正は長時間、長期間にわたりアライナーを装着し続けるためプラークコントロールが不十分であるとう蝕(虫歯)リスクが高まります。
矯正の治療途中でう蝕が発生してしまった場合は、う蝕治療が優先されるため、場合によってアライナーの作り直しが必要になります。
無理な治療計画(適応外症例、非専門医による治療、リカバリーの不備)
マウスピース矯正での失敗の原因としては、こちらも上と並んでよくあります。
マウスピース矯正は、いろいろなことができると宣伝されているものがありますが、あらゆるケースに対応できるものではなく、きちんと適応と非適応を見極めて治療する必要があります。
一般開業医で抜歯が必要なケースをマウスピース矯正のみで行おうとし、前歯を後ろに下げるときにボウイングエフェクトを抑制できず、奥歯がたわむように沈んで咬み合わせが狂ってしまい、ワイヤー矯正によるリカバリーができず、手が施せなくなるという事例があります。
まさに適応外症例、矯正歯科以外での治療、リカバリーの不備の複合した典型例ですが、珍しいことではありません。
廉価なシステムの利用
マウスピース矯正は現在多くの会社から、さまざまなシステムがリリースされています。
SNSの投稿や広告でも目にする機会が増え、有名人やインフルエンサーによるステルスマーケティングも問題視され始めています。
これらのシステムは一般に通院不要であることや、価格の低さを全面に打ち出しているものが多いようです。
確かにこのようなシステムでも治療可能なものはありますが、実際の口腔内やレントゲン画像を見て診断しているわけではなものや、リカバリーが必要になった際の取り扱いがあやふやなものもあります。
マウスピース矯正で失敗しないためには
それでは、マウスピース矯正で失敗しないためにはどうすればよいでしょうか?
矯正歯科での診断・治療
まずは矯正歯科を標榜する歯科医院にて診査診断、治療を受けることが重要です。
ワイヤー矯正と比べて比較的心理的なハードルが低く始められるマウスピース矯正ですが、使用する器具がアライナーであるだけで高い専門性を要する治療に変わりません。
そのため、通常の矯正治療と同じく矯正歯科を受診することが失敗しないために一番大事です。
ワイヤー矯正との併用も考える
マウスピース矯正は、矯正治療をしていることが見た目にわかりづらい反面、適応が限られます。
どうしてもなるべく目立たないようにしたい場合に、マウスピース矯正でできない部分はワイヤー矯正で行い、マウスピース矯正で対応可能なところまで進んだら、マウスピース矯正に切り替えるということができる場合もあります。
すべてのケースで可能なわけではありませんが、相談してみてもよいかもしれません。
治療への協力
先に述べたものと重なる部分になりますが、装着時間を守ること、良好なプラークコントロールを維持することも治療の成功に欠かせません。
【まとめ】インビザラインなどマウスピース矯正の失敗例と失敗しないための対策
目立たない矯正治療として注目されているマウスピース矯正ですが、マウスピース矯正ならではの特性があります。
治療を成功させるためには、ありきたりのよう聞こえますが、矯正歯科による診査診断、治療と患者さんの治療への協力が必要です。
マウスピース矯正で失敗しないための参考になればと思います。