MTM矯正とは
MTMとはMinor Tooth Movementを略した言葉で、『数本以内、多くは1本程度の歯だけを目的に応じて、短期間で移動させる治療』とされています。
アメリカではMTMではなく、LOT(限定的矯正治療)というように、MTM矯正も矯正治療の一種、部分的な矯正治療になります。
したがって、歯並びを整えることにより、見た目や噛み合わせ、歯磨きのしやすさなどを改善させることなどがMTM矯正の目的です。
また、MTM矯正では歯の移動範囲は限定的で、移動させたい歯以外の歯を動かしません。特に歯を動かす余地が少ない場合は、引っ張り出す挺出と傾いた歯を引き起こす整直など、他の歯に影響しない移動方法に限られます。
MTM矯正はこんな方におすすめ
- 歯並びのごく一部だけが気になっている
- 正中離開という前歯の中央の隙間が気になる
- 歯の向きが良くないところがあり、歯磨きがしにくい
- 歯の位置や向きが悪いために歯周病になっている
- インプラント治療を受けたいけれど、隣の歯が寄ってきていて隙間が足りない
- 虫歯が歯肉よりも深いところまで進み、このままでは抜歯するしかない
MTMの特徴
MTM矯正の特徴について、MTMの機能面での特徴や実績からご説明します。
正中離開を短期間で改善
最も中央にある歯を中切歯といいます。
正中離開は、主に上顎の左右の中切歯の間に生じる隙間です。正中離開を解消するには、隙間を埋めるように歯を真ん中に向かって寄せます。
MTM矯正なら中切歯だけを動かしますので、短い治療期間で改善を目指せます。
虫歯や歯周病の予防対策
虫歯や歯周病の予防には、日常の歯磨きがとても大切です。ところが、歯の向きによっては歯が磨きにくいということも珍しくありません。そこで、歯の向きの悪いところだけをMTM矯正で部分的に改善させると歯磨きがしやすくなるため、虫歯や歯周病予防に効果的です。
歯磨きをしやすくすることで虫歯や歯周病を予防するのも、MTM矯正は有用です。
虫歯治療が困難な歯を治療可能にする
現在の虫歯治療では、虫歯で失われた部分を人工材料で補う治療が行われます。そして、失われた部分が大きければ、歯型をとって治療します。
ところが、現在の歯型取りでは歯肉より深いところをしっかりと再現することが難しいです。このため、深いところまで進んだ虫歯は、原則的に抜歯となります。
ある程度歯根が残っている場合、かつMTM矯正で歯根を引き上げることができれば、虫歯治療で治せる可能性が生まれます。
傾いた歯を起こせる
ヒトの歯は、前に向かって移動しようとする傾向があります。
歯が揃っていれば前によってくることはないのですが、歯を失ったままにしていると、後ろの歯が前に向かって移動してきます。このとき、歯は平行に移動しようとするのではなく、倒れ込みながら動いてきます。もし、インプラントやブリッジを入れようとしても、そこの隣に傾いた歯があれば、難しくなります。
MTM矯正なら傾いた歯を起こせるため、インプラントやブリッジも入れやすくなります。
歯周病対策
歯周病は歯周病菌などの細菌感染が原因で起こる病気ですが、その発症と進行にはさまざまな要因が関係しています。
そのひとつが、歯の生え方です。
歯の向きが斜めに傾いていたり、歯並びから少しはみ出したりしている歯の歯周病は悪化しやすい傾向があります。
そのようなとき、MTM矯正で歯の傾きを治したり、歯の位置を整えたりすると、歯周病の進行を抑える効果が期待できます。
被せ物を入れやすくする
現在の虫歯治療では、被せ物や詰め物などの人工材料を使った修復治療が行われます。
ところが、歯の位置によっては被せ物や詰め物が入れられないことがあります。具体的には、歯根が寄り添うほどに近づいているような歯並びです。このようなときMTM矯正を行い、被せ物や詰め物を入れたい歯、もしくはその隣の歯を少し動かすと、被せ物や詰め物で治療できるようになります。
MTM矯正のメリット
MTM矯正には、一般的な矯正治療にはないさまざまなメリットがあります。
治療期間が短い
MTM矯正で移動させるのは、1〜数本程度の限られた歯だけです。
一般的な矯正治療では治療期間が2〜3年と長期に及びますが、MTM矯正では、移動させる歯が少ないため、治療期間も1〜2か月程度と短く、通院回数もそれだけ少なく抑えられます。
忙しい方にも受けていただきやすい矯正治療です。
通院回数が少ない
MTM矯正の期間中は、定期的に歯科医院に通う必要があります。
これは一般的な矯正治療と同じですが、治療期間が短いため、通院回数も少なくなります。
仕事や学業でなかなか通院しづらいという方にも、MTM矯正はメリットのある治療といえます。
治療費を抑えられる
MTM矯正も保険診療の適応は受けていませんので、一般的な矯正治療と同じく自費診療になります。
一般的な矯正治療と同様に自費診療であっても、MTM矯正は歯を移動させる範囲も狭く、治療期間も短いことから費用を低く抑えられます。
ピンポイントでの歯の位置の改善
MTM矯正は、歯の位置や向きが悪いためにブリッジやインプラント治療ができない、歯周病が進行しやすいなどの場合、問題となっている部分だけをピンポイントで改善できます。
歯を傷めない
短期間で歯並びを整える矯正治療としては、MTM矯正のほかにセラミック矯正があります。
セラミック矯正は、歯を削ってセラミッククラウンを被せることで歯並びをきれいに見せる治療です。歯の色も形も整えられるのがセラミック矯正の利点ですが、一度削った歯は元に戻りません。
MTM矯正なら歯を削ることなく歯並びを整えられるため、歯を傷めることがないというメリットがあります。
MTM矯正のデメリット
MTM矯正には多くのメリットがありますが、デメリットがないというわけではありません。
動かせる歯が限られている
MTM矯正では、対象となる1本ないし数本の歯以外の歯は移動させません。
この範囲の歯の移動で綺麗な歯並びにならない場合は、MTM矯正での治療は困難になります。
通常の矯正治療では、他の歯を移動させてスペースを確保することができますので、移動対象となる歯が限られているのは、MTM矯正のデメリットともいえます。
歯の移動方法が限られている
MTM矯正では、移動させられる歯が限られているため、水平方向への移動は難しいケースも多いです。
水平方向へ移動させられない、もしくはほんのわずかしか移動させられないような場合、移動の方法は引っ張り出すか、押し込めるという垂直方向の移動が主となります。
このため、MTM矯正で対応できる歯列不正には限界があります。
移動距離の限界がある
MTM矯正では対象となる歯以外の歯を移動させないため、歯の移動距離に限界があります。
八重歯のように大きくはみ出した歯や過蓋咬合という噛み合わせが深い歯列不正など、歯の位置を大きく移動させて整えることは、MTM矯正ではできません。
他の歯に影響が出る可能性がある
MTM矯正のメリットのところで、正中離開の例を挙げました。
正中離開の幅が広い場合、中切歯を中央に向かって寄せると、反対側に隙間ができる可能性があります。また、噛み合わせている下顎の前歯と過度に噛み合ってしまうこともあります。
他の歯に影響が出る場合は、他の歯も移動させて歯並びを整えていかなければなりません。
適応症に限度がある
MTM矯正で治療できる歯列不正は、残念ながらさほど多くありません。
奥歯の噛み合わせが悪い場合や上顎と下顎の顎の骨格に問題がある場合、歯並びが全体的に著しく悪い場合などは、MTM矯正で部分的に改善させたくても治療できないこともあります。
MTM矯正の症例
治療名:MTM矯正 / 症例:空撃歯列 / 治療期間:1週間程度 / 通院回数:2回
治療名:MTM矯正 / 症例:空撃歯列 / 治療期間:1週間程度 / 通院回数:2回
治療名:MTM矯正 / 症例:空撃歯列 / 治療期間:1週間程度 / 通院回数:2回
MTM矯正の適応
空隙歯列・正中離開(すきっ歯)
MTM矯正の流れ
MTM矯正の治療の流れは移動対象となる歯が少ないだけで、一般的な矯正治療と多くは変わりません。
女性歯科医師との診察・相談を行います。歯並びで気になっている点や希望などをお伺いし、MTM矯正についてのご説明をいたします。
そして、現在治療中の病気や過去にかかったことのある病気の有無や治療歴、薬や食べ物に対してのアレルギーの有無などの問診も行います。
レントゲン写真による検査としては、パノラマエックス線写真撮影、頭部エックス線規格写真などが行われます。
これらは骨格の検査に用いられますが、その他にも、歯型をとって石膏を入れて作る診断用模型を使った検査、顔やお口の中の写真撮影による検査など、さまざまな検査があります。
レントゲン写真による歯や骨格の検査、診断用模型を使った検査などの結果から歯並びの状態を診断します。
診断の結果、MTM矯正での治療が可能かどうか、可能な場合、どのような方法が適しているのかを判断し、治療計画の立案とご提案をいたします。
治療計画をご確認いただき、同意をいただければ治療開始となります。
MTM矯正の方法は、ブラケットとワイヤーを使うワイヤー矯正、マウスピースを使うマウスピース矯正、アンカースクリューを使うインプラント矯正の主に3種類があります。
いずれの方法が適しているのかは、症状やご希望に沿って選びます。
移動させたい歯が目的の位置にまで移動すれば、MTM矯正は終了です。
ワイヤー矯正の方は、矯正装置を撤去します。インプラント矯正の方は、アンカースクリューを含めた矯正装置を撤去します。
矯正治療後は、後戻りを防ぐために保定装置を装着します。
保定装置を使う期間は、一般的な矯正治療よりも短くなる場合がほとんどです。
MTM矯正の料金・費用
メニュー名 | 本数・回数 | 価格 |
---|---|---|
MTM矯正 | 隙間一か所のみ | 165,000円 |
MTM矯正のよくある質問
あらゆる歯列不正を治せるわけではありませんが、すきっ歯すなわち空隙歯列以外にもMTM矯正で改善できる歯列不正はあります。
もし、MTM矯正での矯正治療をご希望でしたら、まずはMTM矯正の適否を歯科医師とご相談になることをおすすめします。
MTM矯正でも、一般的な矯正治療と同じく歯を移動させるので、移動に伴う痛みが生じる可能性はあります。
しかし、一般的な矯正治療と異なり、移動させる歯は限られていますし、移動させる距離も限定的です。このため、MTM矯正中の痛みも一般的な矯正治療と比べるとわずかです。
MTM矯正であっても、歯を移動させた後は後戻りのリスクがあります。
したがって、ブリッジの支えにする場合など一部の例外を除いて、MTM矯正を行った後は原則的に保定が必要になります。
上顎の前歯の間の筋は、上唇小帯という筋だと思われます。
上唇小帯が長く、前歯の間にまで伸びていると前歯が近づけないため、前歯に隙間ができてしまいます。この場合は、上唇小帯の切除が必要ですので、MTM矯正単独で改善することはできません。
上顎の前歯の間に埋まっている余分な歯とは、上顎正中過剰埋伏歯という歯です。痛みも腫れもなく、レントゲン写真を撮影して初めて見つかるというのが特徴です。
上顎正中過剰埋伏歯があると、隙間を埋めるために歯を寄せようとしても、過剰歯が邪魔をして寄せられません。矯正治療に先立って、上顎正中過剰埋伏歯を抜歯しなければなりません。
MTM矯正のページをご覧の皆様へ
笑った時に部分的に見える歯列不正が気になって、手で口元を隠したり思いっきり笑えないなんてことはないですか?
多くの患者様はこの部分的に悪い歯並びのために「全体的に矯正するのは嫌」「高額な費用は掛けられない」「治療期間が長い」などと断念される方が多いのも事実です。MTMはそんな部分的な歯列不正の状態を、歯を削らずに動かし、治療期間も短く済む治療です。
前歯などの部分的な歯列不正が気になる方は、まずは診察・相談にお越しください。
MTM矯正の治療概要
治療方法 | MTM矯正 |
---|---|
治療説明 | MTMは空隙歯列や軽度の叢生に対し、ゴムを使用してご自身の歯を引き寄せる矯正方法です。 |
治療費 | 165,000円 |
治療の副作用(リスク) |
|
治療期間 | 1か月程度 |
治療回数 | 2回 |
適応症例 | 空隙歯列 |
ダウンタイム | なし |
カウンセリング当日の治療 | カウンセリングまで |
入院の必要性 | なし |
術後の制限事項 | 保定期間あり |
不適応の症例 | 空隙歯列以外の歯列不正 |