ブラキシズムとは
ブラキシズムとは、上下の歯が咀嚼や発音といった機能的な動作を伴わず、非機能的な摂食を起こしている状態を言います。広い意味で歯ぎしりとも言います。
ブラキシズムは、下顎の動きによって、タッピング、クレンチング(咬みしめ)、グラインディング(下顎の水平運動)に分類されます。
また、無意識化で起こる睡眠時ブラキシズムと、覚醒時ブラキシズムに大別することができます。特に睡眠時ブラキシズムは、睡眠関連の疾患に由来し、中枢系の問題であることが分かっています。対して、覚醒時ブラキシズムにみられるクレンチングを含めた日中の上下歯列接触癖 (TCH: Tooth Contacting Habit) は、習癖の1つと考えらえています。
ブラキシズム治療とは
ブラキシズムの治療は、それぞれの原因に合わせて治療を行うことが必要です。基本的には、可逆的な治療である認知行動療法から始めます。
認知行動療法では、咬みしめや、猫背、片側咀嚼、頬杖、足を組むといった悪習癖を意識的に除去することから始めます。また、緊張やストレスを減少させるためにリラックスすることを心がけます。
次に一部の歯が強く当たるといった、補綴物(詰め物や被せ物)の不適合がある場合には、咬み合わせの調整や補綴物の新製を行います。
その他のブラキシズム治療では、スプリント療法と呼ばれるマウスピースの装着や咬筋へのボトックス注射も効果的です。
ブラキシズム治療はこんな方におすすめ
- 口を開けると、カクっと音が鳴る方や耳の手前に痛みがある方
- 以前より口を大きく開けられなくなった方
- ゆっくり口を開けた時に、顎が左右いずれかにズレている方
- 就寝時の歯ぎしりを指摘された方
- 寝起きに顎や頬に痛みがある方や口を開けにくい方
- 歯のすり減りを自覚もしくは、歯科医院で指摘された方
- 以前より、エラが張ってきた方
当院のブラキシズム治療
ブラキシズムの解消には、原因に合わせた適切なアプローチが必要です。当院では、主に2つの方法をご提供しております。
ボトックス療法
ブラキシズムに対するボトックス療法とは、ボツリヌストキシンを成分とする注入薬を咬筋に注入し、咬合力を緩和する方法です。
効果は3か月程度をピークに減少し、徐々に元の状態に戻ります。再度注射をすることで、良好な状態を維持することができます。
スプリント治療
ブラキシズム治療の中で、特に睡眠時ブラキシズムに特化した治療方法がスプリント治療です。
透明なマウスピースを装着することで、歯や歯肉、顎関節への負担を軽減する方法です。日常における食いしばりが多い場合には、日中の装着を行うこともあります。
ブラキシズム治療のメリット
ブラキシズムは、継続すると慢性的な不調を引き起こすため、治療により改善することは、身体的によい影響を及ぼします。
顎関節症の改善
慢性的な肩こりや頭痛、めまいといった不調が顎関節に由来することがあります。
顎関節の主な症状は、口が開けにくい、口を開けると音がするといった軽度のものから、奥歯の痛みや顔の筋肉の痛みにつながります。
歯や歯肉の保護
ブラキシズムにより、垂直、水平方向から過重な負担が歯に加わることで、歯の破折や補綴物の破損の他、歯を支える歯肉に炎症を及ぼすことがあります。ブラキシズムを除去することは、口腔環境の改善につながります。
歯周病の改善
ブラキシズムにより、歯肉が炎症したことで発生した炎症物質が血行によって全身に運ばれることで、糖尿病や認知症、心筋梗塞・脳梗塞といった全身疾患の悪化や発生を引き起こす可能性が指摘されています。
ブラキシズムの解消は歯周病の改善だけでなく、全身の健康につながります。
ブラキシズム治療のデメリット
ブラキシズムは悪習癖のため解消することが基本ですが、治療にあたってデメリットやリスクもあります。
スプリントによる不快感
スプリントは歯牙にぴったりと密着した状態で使用するため、不快感が少なく設計されていますが、嘔吐反射や口腔内の異物感に敏感な方は、不快感が強く装着が難しいことがあります。
う蝕リスクの発生
スプリントを装着することで、歯は口腔内で唾液と接することがありません。
唾液には、自浄作用と言って細菌の活動を抑制する働きがあるため、スプリントを装着することで、う蝕リスクが上昇する可能性があります。
咬合の不安定
ブラキシズム治療では、支台歯に適合していない補綴物の新製は必要ですが、安易な咬合調整は注意が必要です。また、歯の切削は可逆的な処置ではないため、第一選択ではありません。
闇雲に咬み合わせを調節することで、治療前より咬み合わせの違和感が強くなることがあります。
ボトックス療法による頬のボリュームダウン
ボトックス療法は、小顔効果を期待して美容外科や美容皮膚科でも採用される処置の1つです。特に頬のボリュームが少ない方がボトックスを咬筋に注入すると、頬がこけて不健康に見えてしまう可能性があります。
ブラキシズムの症状
ブブラキシズムは、顎の動きによって、3つに分類されます。顎の動きは1方向だけでなく、複合して起こっている症例も稀ではありません。
グラインディング(歯ぎしり)
グラインディングは、一般的に歯ぎしりと呼ばれる上下の歯を接触した状態で、下顎を水平方向に動かす動きです。
睡眠時ブラキシズムに多くみられます。歯の摩耗や歯肉に炎症を及ぼすリスクがあります。
クレンチング(食いしばり、噛み締め)
クレンチングとは、スポーツ時の食いしばりや重い荷物を持ち上げる際の咬みしめと同様、上下の歯を強く咬み合わせる動作のことです。
歯牙の破折や歯肉の炎症、顎関節への負担リスクがあります。
タッピング
タッピングは、グラインディングやクレンチングに比べて、発生頻度の低いブラキシズムの1つです。上下の歯をカチカチと咬み合わせた音がするため、症状の自覚が起こりやすいことが特徴です。
ブラキシズムの原因
ブラキシズムの原因は、口腔内の物理的要因や日常生活における習癖、心理的要因が作用することが分かっています。
物理的要因
咬み合わせの感覚は、μ単位で感知できるほどに繊細です。そのため不適合な補綴物(詰め物や被せ物)があると、違和感を生じてブラキシズムを発生する要因となります。
歯並びの不正、歯周病の悪化
歯並びの不正がある場合や歯周病の悪化による歯肉の炎症により、咬み合わせが安定していないことも、ブラキシズムの原因となります。
頬杖、足組み、片側咀嚼
頬杖や足組み、片側咀嚼といった身体の左右一方に負担を強いる悪習癖は、咬み合わせに悪影響を及ぼします。結果として咬み合わせに偏りが生じ、ブラキシズムを発生するきっかけとなります。
心理的要因
ブラキシズムの原因には、日常生活におけるストレスや疲労が関係することが分かっています。
十分な睡眠や休息を確保し、リラックスすることが重要です。クレンチングのような強い食いしばりを自覚している場合には、意識的にブラキシズムの機会を減らすなどの対策も有効です。
ブラキシズムが体に引き起こす悪影響
慢性的なブラキシズムは、顎関節症や歯周病の悪化につながります。結果として、全身への悪影響も否定できません。
顎関節症の発症
通常、安静空隙と言って上下の歯の間には、2~3㎜程度の隙間が空いていることが理想的です。
しかし、ブラキシズムのように、上下の歯が咬み合わさった状態では、顎関節に負担がかかり、関節がすり減り、痛みや雑音、頭痛や肩こりが起こることがあります。
歯周病の悪化
歯周病は心筋梗塞や脳梗塞、糖尿病の悪化などとの関連が指摘されている感染症の1つです。
ブラキシズムにより慢性的に歯肉に過重がかかると、歯肉の炎症を引き起こし、炎症物質が全身に波及することで慢性疾患にも悪影響を生じます。
歯や補綴物のすり減り
歯ぎしりや食いしばりが多いことは、歯の摩耗や補綴物の破損につながります。歯や補綴物がすり減ることで、知覚過敏や2次カリエス(治療したう蝕が再度う蝕になること)のリスクが高まる危険性があります。
歯の破折、歯並びの悪化
ブラキシズムにより過剰な負担が歯牙にかかることで、歯が折れる、欠けるといった問題や歯牙に水平方向に強い力が持続的にかかることで、歯並びが悪化するリスクがあります。
くさび状欠損といって、歯肉近くの歯質が削れる現象の原因にもなります。
ボトックス療法の流れ
ボトックス療法は忙しい方でも受けやすい、最短で診察当日の施術が可能な短時間で完了する処置です。
ブラキシズムの診断や治療の経験豊富な女性歯科医師が、患者様の現在のお悩みについてお話を伺います。
その後、口腔内の歯牙や歯肉の状態、顎関節に関係する筋肉の状態を診察し、適した治療方法をご提案いたします。
注射針の挿入による痛みを緩和するため、咬筋の刺入点に表面麻酔を行い、十分に効果が奏功したタイミングで、無毒化したボツリヌストキシンを注入します。
所要時間は、10分程度の短時間で完了する処置です。
治療直後は効果を実感しませんが、施術後3日目くらいから徐々に効果を実感してきます。効果は2週間程度で安定して、3か月程度から減少しはじめ、6か月ほど持続します。
効果の持続期間には個人差がありますが、4~6か月に1度の間隔で施術を定期的に受けると効果的です。
スプリント療法の流れ
当院では患者様の生活習慣を考慮し、就寝時のブラキシズムの解消のため、スプリント療法をご提供しております。
診察・相談では、患者様それぞれのブラキシズムの症状を確認し、原因を判断していきます。
生活習慣を含めた問診の後、口腔内診査(う蝕や歯周病の状態確認)、レントゲン撮影を行います。所要時間は1時間程度を予定しております。
う蝕や歯周病がある場合には、スプリント療法前に治療が必要です。口腔内の状態が安定していないままスプリント療法を行っても、効果が現れないためです。
咬み合わせに合わない補綴物(詰め物や被せ物)の新製なども行います。
スプリントはマウスピース型の装置ですので、患者様それぞれの歯列に合わせて製作する必要があります。歯型を取り、提携の技工所へ発注します。
スプリントが完成したら、使用方法やケアについてご説明いたします。
デスクワークなど、集中してお仕事をなさっている間や咬みしめが想定されるスポーツ中、就寝時など、歯科医師の指示に従ってスプリントを装着していただきます。
効果や装置の破損の有無を確認するため、3か月置きにチェックのためにご来院いただきます。
スプリントの咬み合わせの確認や調整、歯肉や歯牙の状態確認を行うため、所要時間は30分程度です。
ブラキシズム治療の料金・費用
メニュー名 | 本数・回数・内容 | 価格 | モニター価格 |
---|---|---|---|
スプリント治療 | 歯ぎしり用 | 33,000円 | |
スポーツ用 | 55,000円 | ||
ボツリヌストキシン注入 | ニューロノックス 1回全体 | 49,500円 | |
ボトックス 1回全体 | 79,200円 | 57,200円 |
ブラキシズム治療(歯ぎしり治療)のよくある質問
睡眠時ブラキシズムに効果的な方法の1つはスプリント療法です。
就寝時にマウスピースを装着することで、歯牙や歯肉、顎関節にかかる負担を軽減することができます。つまり、寝ている間にスプリントというマウスピース型のトレーを装着して、噛む力から守る方法です。
また、ブラキシズムの原因にストレスがあります。リラックスした状態で眠りにつけるよう、生活におけるストレスの除去に努めましょう。
当院でご案内しているボトックス療法も可能な場合がございます。
ブラキシズムの原因や症状の特徴など個人差があるため、スプリントの装着期間は断定できませんが、早くて数か月で効果を実感できます。症例によっては、年単位での装着をお勧めする場合もございます。
就寝時の目立たない装置ではありますが、大まかな治療期間を診察・相談時にお伝えしております。
ボトックス療法は、術後3日程度で徐々に効果が現れてきます。当院ではボトックス療法の経験が豊富な歯科医師が担当することで術後の経過を想定し、術後2週間程度でご満足いただける効果を実感できるようになります。
ボトックス療法は、永久的な治療ではありません。個人差がありますが、術後3か月程度から効果が減少し、徐々に元の状態に戻ります。効果の持続はおおよそ半年が目安です。効果が薄れてしまった場合には、再度ボトックス注入を受けることで効果を持続することができます。
ボトックス療法では、注射針を挿入する際と術後の副作用の痛みの2種類の痛みが想定されます。
個人差があるため一概には言えませんが、表面麻酔の使用により、注射針を挿入する際の痛みを緩和することが可能です。また術後、一過性の疼痛や違和感などの副作用が発生する場合がありますが、術後も丁寧なケアを行っておりますので、遠慮なくご相談ください。
ブラキシズム治療のページをご覧の皆様へ
このページでは、食いしばりや歯ぎしりなどによって、過剰に奥歯や顎へ負担がかかり様々な悪影響を及ぼすブラキシズムを改善する治療についてご確認いただけます。
ブラキシズムの原因はさまざまで、ストレス、古い虫歯治療後や虫歯の放置、生活習慣など本当に様々です。原因を特定することは困難といわれているため、様々な対処療法を試みて改善を目指します。その中で、当院で取り扱うブラキシズム治療は、できるだけ歯を保存的に、費用をかけず、安心、安全、手軽に行えるものを採用しています。
お口の状態にもよりますが、ブラキシズム治療の経験豊富な女性歯科医師が丁寧に検査・診断したのち、主にマウスピーストレーを夜間や症状が集中する際に装着していただくスプリント療法と、噛む力を軽減する咬筋へのボトックス注入を用いております。どちらが最適かは、診察したのち担当医と話し合って選択していきます。
また当院は一般社団法人歯科国際先端医療普及協会の推薦歯科医院として、咬筋ボツリヌス治療を安心・安全な技術により、満足度の高い治療を提供しております。
ブラキシズム治療 (歯ぎしり治療)の治療を担当する歯科医師
ブラキシズム治療 (歯ぎしり治療)の治療概要
治療方法 | ブラキシズム治療 (歯ぎしり治療) |
---|---|
治療説明 | ブラキシズム治療は、マウスピースや咬筋へのボトックス注射により、歯ぎしりや食いしばりを改善する治療です。 |
治療費 | 29,700円〜79,200円 |
治療の副作用(リスク) |
【スプリント治療】
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治療期間 | 2週間〜4週間 |
治療回数 | 2回〜4回 |
適応症例 | 習慣性の歯ぎしり、食いしばりなどで咬合圧が強い場合 |
ダウンタイム | なし |
カウンセリング当日の治療 | カウンセリングまで |
入院の必要性 | なし |
術後の制限事項 | なし |
不適応の症例 |
【スプリント治療】
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