セラミック治療のやり方や治療の流れ
審美性の高い歯科治療をご希望の場合、セラミック治療、すなわちセラミック歯がよい選択肢となります。さらにセラミック治療にはいくつか種類があり、治療の進め方もそれぞれ異なります。
この記事では、セラミック治療の種類と治療の流れなどを解説します。
この記事を読むことで、セラミック治療の種類による支台歯形態の違い、一般的なセラミック治療の流れなどを理解でき、下記のような疑問や悩みを解決します。
こんな疑問を解消!
- セラミック治療の種類
- セラミック治療の種類と支台歯形態の違い
- 各セラミック治療の流れ
セラミック治療の種類
セラミック治療は、セラミッククラウン、セラミックインレー、ポーセレン・ラミネートベニアの3種類に分類できます。
セラミッククラウン
セラミッククラウンは、セラミック製の全部被覆冠で歯間全体を覆います。
現在用いられているセラミッククラウンは、陶材焼付鋳造冠、ジルコニア・オールセラミッククラウン、e-max(イーマックス)の3種類あります。
e-maxもジルコニア・オールセラミッククラウンと同じく、金属材料を一切使わないため、オールセラミッククラウンの一種です。
陶材焼付鋳造冠
陶材焼付鋳造冠は、ポーセレンというセラミックの内側を金属フレームで補強したセラミッククラウンです。
ポーセレンの破折のリスクの高さを金属フレームで補強しています。後述する2タイプのセラミッククラウンと比べると、金属を内面フレームに用いているため、透明感で劣ります。
ジルコニア・オールセラミッククラウン
ジルコニア・オールセラミッククラウンは、ポーセレンの外層の内面をジルコニアというセラミック材で補強したセラミッククラウンです。
ジルコニアは、人工ダイヤモンドとも呼ばれる光透過性と強度を備えたセラミック材料です。ジルコニアを使ったセラミッククラウンは、光沢感や透明感が天然歯に近似している上、強度も高く保たれています。
e-max(イーマックス)
e-maxは、二ケイ酸リチウムガラスセラミックというガラス系のセラミック材料で作られたセラミッククラウンです。
陶材焼付鋳造冠やジルコニア・オールセラミッククラウンのようなポーセレンと内面フレームという二層構造ではなく、全て二ケイ酸リチウムガラスセラミックで作られています。
ガラス系のセラミック材料なため、透明度が高いのが利点です。しかも、単一材料なので強度も確保されています。
一方、透明度が高く変色歯に用いると歯の色がカバーしづらい点、単一材料なため天然歯のグラデーションの再現が難しいといった難点があります。
セラミックインレー
インレーとは、咬合面の小窩裂溝(臼歯部の咬合面や頬側面などにできたくぼみ)を中心とした部分的なう蝕(齲蝕)の治療に用いられる修復治療法で、一般的には修復物や詰め物と呼ばれています。
このインレーの素材をセラミックとしたものが、セラミックインレーです。
セラミックインレーには、ジルコニアで作られたジルコニア・セラミックインレーと二ケイ酸リチウムガラスセラミックで作られたe-maxインレーの2種類あります。
ポーセレン・ラミネートベニア
ポーセレン・ラミネートベニアは、前歯部の唇側面の色調や形態の改善を目的として、ポーセレンの薄いカバーを前歯の唇側面に装着する修復治療法です。
ポーセレンの強度はエナメル質と同程度とは言え、ラミネートベニアは薄いため、咬合力によって切縁が破折するリスクがあります。このため、ポーセレン・ラミネートベニアは、咬合関係の改善には利用できません。また、著しい捻転歯、歯の傾斜や偏位も基本的に適応外です。
支台歯形態の違い
被せるクラウンやインレーの種類によって、支台歯形態が変わってきます。
セラミッククラウン
セラミッククラウンの支台歯形態は、金属フレームのある陶材焼付鋳造冠と、金属を一切使わないオールセラミッククラウンとの間で違いがあります。
陶材焼付鋳造冠
陶材焼付鋳造冠の唇側面の審美性は、金属フレームのある部分とない部分(切縁付近)で入射光と透過光をコントロールしなければなりません。特に支台歯の切縁付近が重要です。
そこで唇側面や頬側面は3面形成にして、切縁付近のポーセレンの厚みが増すようにしています。このため、唇側面や頬側面の支台歯削除量は、0.8〜1.2㎜と不均一になっています。なお、切縁や咬合面の削除量は、前歯部で2㎜、臼歯部で1.5㎜です。
オールセラミッククラウン
オールセラミッククラウンの形成では、支台歯に応力が集中するのを防ぐために、角は全て丸めて、表面をスムーズに仕上げます。また、外層のポーセレンの破折のリスクを下げるために、ポーセレン層の厚みが均一になるような咬合面形態にします。
切縁や咬合面の削除量は1.5〜2.0㎜、唇側面や舌側面のそれは1.0〜1.5㎜です。
セラミックインレー
セラミックインレーは、セラミッククラウンと異なり、内側性の支台歯形成となります。
セラミックインレーでは、対合歯との咬合接触面に触れないように支台歯形成します。また、窩洞は、底面を含め、全体的に丸みを帯びた形状とします。メタルインレーと異なり、窩洞には窩縁斜面は形成しません。
支台歯の形成範囲が咬合面に及ぶような症例では、セラミックインレーではなく、セラミッククラウンによる治療が選択されます。
ポーセレン・ラミネートベニア
ポーセレン・ラミネートベニアも、セラミッククラウンと同じく外側性の支台歯形成ですが、形成範囲は唇側面に限局されます。削除量も少なく、合着材の接着力を確保するためにもエナメル質にとどまります。このため、支台形成の深さは0.8mm前後しかありません。
ポーセレン・ラミネートベニアは、最も侵襲性の低いセラミック治療です。
セラミック治療の流れ
一般的なセラミック治療の流れについてご説明します。
術前
治療前には下記の流れで、歯科医師による診察、検査、診断を行います。
- ❶問診
主訴や既往歴などを確認します。 - ❷検査
レントゲン写真撮影や口腔内の視診・触診などにより検査し、歯や歯周組織の状態を検査します。 - ❸診断
検査の結果をもとに、セラミック治療の適応があるか、ある場合どの方法が適しているかを診断します。 - ❹説明と同意
診断の結果や、治療法のメリットやデメリット、治療計画を説明します。治療法などに同意をいただければ治療開始です。
各セラミック治療の流れ
セラミック治療の種類ごとに治療の流れをご説明いたします。
セラミッククラウン
セラミックインレー
- ❶支台歯形成
- ❷印象採得と咬合採得
- ❸仮封
- ❹セラミックインレーの製作
- ❺セラミックインレーの適合性の確認
- ❻セラミックインレーの装着
- ❼余剰セメントの除去
- ❽咬合関係の確認
- ❾辺縁部分の仕上げ研磨
ポーセレン・ラミネートベニア
- ❶支台歯形成
- ❷印象採得
- ❸仮封
- ❹ポーセレン・ラミネートベニアの適合性の確認
- ❺隣接面にマトリックス(隔壁材)を挿入
- ❻レジンセメントを塗布
- ❼ポーセレン・ラミネートベニアの装着
- ❽余剰セメントの除去
- ❾咬合関係の確認
- ➓辺縁部分の仕上げ研磨
- セラミック治療後は咬合関係、隣接歯との関係などに異常が生じていないかを確認するため、後日経過観察します。
【まとめ】セラミック治療のやり方や治療の流れ
セラミック治療の種類と支台歯形態の違い、それぞれの治療の流れなどを解説しました。
この記事では、下記のようなことが分かったのではないでしょうか。
ここがポイント!
- セラミック治療は、セラミッククラウン、セラミックインレー、ポーセレン・ラミネートベニアの3種類がある
- セラミッククラウンのうち、陶材焼付鋳造冠は審美性に配慮した支台歯形態となり、オールセラミッククラウンは支台歯への負荷やポーセレン破折のリスクに配慮した支台歯形態となる
- セラミックインレーでは、対合歯との咬合接触面に触れないよう支台歯を形成し、窩洞は全体的に丸みを帯びた形状とする
- ポーセレン・ラミネートベニアの支台形成の深さは、0.8㎜前後にとどまる
- セラミック治療の前には、問診→検査→診断→説明を行い、同意のうえで治療を開始する
- セラミッククラウンでは、支台歯形成→印象採得・咬合採得→仮歯の装着→セラミック歯の製作・適合性の確認・装着→余剰セメントの除去→咬合関係の確認という流れになる
- セラミックインレーでは、支台歯形成→印象採得・咬合採得→仮封→インレーの製作・適合性の確認・装着→余剰セメントの除去→咬合関係の確認・辺縁部分の仕上げ研磨という流れになる
- ポーセレン・ラミネートベニアでは、支台歯形成→印象採得→仮封→ポーセレン・ラミネートベニアの適合性の確認→隣接面に隔壁材を挿入→レジンセメントを塗布→ポーセレン・ラミネートベニアの装着→余剰セメントの除去→咬合関係の確認・辺縁部分の仕上げ研磨という流れになる
セラミック治療を検討する際には、それぞれの特徴だけでなく治療の流れも理解しておくことが大切です。治療への理解度が深まれば、ご自身の選択肢を増やすことにもつながるでしょう。
南青山矯正歯科クリニックのセラミック治療は、治療実績が10年以上の熟練した技術を持つ、女性歯科医師が治療前の診察・相談から治療後の定期検診までを一括して担当いたします。セラミック治療について、ご不明点などがありましたら、事前の診察にてご相談ください。