小・中・高校生から歯列矯正を始めるメリットとデメリット
矯正歯科治療をいつから始めるべきか、お悩みの方も多いことでしょう。
しかし、歯列矯正の開始時期を決定するにはさまざまな要因が関連し、開始時期によって方法や治療期間に差が出てきます。特に心身共に成長過程にある小・中・高校生から歯列矯正を始める場合、メリット・デメリットにどのような違いがあるのでしょうか。
この記事では、矯正歯科治療の開始時期による治療法や考え方、治療開始にあたり重要な点などについて解説します。
この記事を読むことで、小・中・高校生で歯列矯正を始める場合のメリット・デメリット、中高生が受ける歯列矯正の内容などを理解でき、下記のような疑問や悩みを解決します。
こんな疑問を解消!
- 小学生から歯列矯正を始めるメリット・デメリット
- 中学生から歯列矯正を始めるメリット・デメリット
- 高校生から歯列矯正を始めるメリット・デメリット
- 中学生・高校生が受ける歯列矯正の種類と特徴
小学生から歯列矯正を始める場合
小学生の歯は、乳歯と永久歯が混在する混合歯列という状態です。混合歯列期は歯列と顎が発育途上にあります。
混合歯列期に矯正治療を開始した場合、以下の流れで治療を進めていきます。
- ❶Ⅰ期治療:永久歯の前歯が萌出完了した時期から約1年〜1年半の期間の矯正治療
- ❷経過観察:側方歯群の永久歯への生えかわりと第二大臼歯萌出の様子をみていく
- ❸Ⅱ期治療:すべてが永久歯に生えかわった後に行う、約2年間の全体の矯正歯科治療
- ❹保定:全体の矯正歯科治療後に約1年半〜2年間、簡単な装置により歯列と咬合を安定させる
メリット
混合歯列期における矯正歯科治療の特徴は、成長の利用が可能であることが最大のメリットと考えられます。
この時期に矯正歯科治療を開始することで、成長発育を利用して骨格の状態を改善できます。そのため、抜歯せずに治療できたり、抜歯する本数を減らしたりすることが期待できます。加えて、将来的な外科矯正治療の必要性を減らすことができます。
また、Ⅰ期治療から行うと、Ⅱ期治療の期間が短縮できる可能性があります。
デメリット
多くの場合、Ⅱ期治療まで必要なため、継続的な治療となり、トータルの治療期間は長くなります。
Ⅰ期治療で使用する装置は自分で取り外しできる装置が多いため、患者さん自身が治療に協力的でない場合は、治療の結果に影響することがあります。
混合歯列期は乳歯と永久歯が混在し、萌出途中の歯も多数存在し、プラークコントロールが非常に難しいです。そのうえ矯正装置を使用することで、さらに虫歯や歯肉炎のリスクが高まります。
混合歯列期においての不正咬合はきわめて多様性に富んでいるため、診断も複雑となり、治療開始時期も一様ではありません。成長の様相を慎重に観察し、場合によっては成長が完了するのを見届けてから治療を行う場合もあります。
中学生から歯列矯正を始める場合
中学生は乳歯が全て生え変わり、第二大臼歯を含めた乳歯にない歯も生え揃って、永久歯による歯列が完成する時期です。しかし、この時期は永久歯が生え揃っても、顎を含む体全体は成長過程の段階です。
メリット
骨の代謝が活発なので、歯の移動がスムーズに進み、治療期間も短く済む可能性があります。
中学生は勉強や部活が忙しくなってきますが、進学による転居の可能性も低く、継続して同じ歯科医院に通院しやすいのもメリットです。
自分の顔や見た目への意識が高まる時期なので、この時期から治療を開始することで早めのコンプレックスの解消につながります。
デメリット
小学生と比べるとプラークコントロールの徹底に協力的なことが多いですが、取り外しできない装置を使用することも多いため、虫歯や歯肉炎については十分な注意が必要です。
使用する装置によっては、治療期間中に審美性が低下します。あまり目立つ装置は避けたいという方には、目立ちにくい装置を選択することを検討しましょう。
高校生から歯列矯正を始める場合
高校生になると顎の成長もほとんど終了し、治療の内容もほぼ大人と同じものになります。しかし顎の成長は止まっていても、大人と比べると歯の移動はスムーズになります。
メリット
大人と比べると依然として歯の動きはスムーズで、治療期間が短く済む可能性があります。
親知らずが萌出する時期なので、親知らずを利用した治療計画が可能であり、親知らずの萌出の仕方によって抜歯が必要になる場合は、抜歯することもできます。
自分の意志や目的意識をもって治療を開始することが多いため、治療に積極的で理解度も高く、虫歯や歯肉炎の予防を徹底できます。
デメリット
使用する装置は中学生と同様なので、使用する装置によっては、治療期間中は審美性が低下します。
高校生後半の時期に開始すると、受験や進学、就職などの進路によって、転医が必要になる場合があります。
中学生・高校生が受ける歯列矯正の種類
永久歯が生えそろっている中学生・高校生の矯正治療は基本的に大人と同じ内容です。使用する装置によって費用も変わりますし、症例によっては適応でない装置もあります。歯科医師と相談したうえで、装置を選択します。
ワイヤー矯正
歯にブラケットという装置を付けて、ワイヤーを介して歯並びを整えていく方法です。唇側の歯の表面にブラケットを貼り付けるため、治療中は装置が目立ちます。メタルブラケットではなく白色のセラミックブラケットを使用すると、審美性は少し改善します。
歯の舌側にブラケットを装着する舌側矯正(裏側矯正やリンガル矯正ともいう)は、治療中に装置の露出がなく、審美性に優れています。しかし、舌が慣れるまで発音障害や違和感が出ます。また、装置の直視が困難なため、清掃が難しいです。
ワイヤー矯正は、ほぼすべての症例で適応できます。
マウスピース矯正
透明なマウスピースを交換しながら矯正する方法です。矯正装置が目立たないため、審美性に優れています。また、自分で装置の取り外しが可能なため、清掃性にも優れています。
しかし、抜歯せずに治療が可能な比較的難度の低い症例に適応されることが多く、すべての症例に適応できない可能性があります。
また、1日17~20時間装着できない場合には、歯が目的の位置まで移動しないので治療期間が延長したり、治療結果が思わしくないということになったりします。
【まとめ】歯列矯正を始めるタイミングに迷ったら歯科医院に相談
小・中・高校生で歯列矯正を始めるメリット・デメリット、中学生・高校生が受ける歯列矯正の種類や特徴などを解説しました。 この記事では、下記のようなことが分かったのではないでしょうか。ここがポイント!
- 小学生で治療を始めると骨格の状態を改善できるため、抜歯のリスクが低くなるが、継続的な治療が必要なため治療期間は長くなる
- 中学生で治療を始めると、歯の移動がスムーズに進んで治療期間が短く済む可能性があるが、矯正治療期間中の審美性低下による心理的なデメリットがあり、矯正装置によっては虫歯や歯肉炎にも注意が必要
- 高校生は大人に比べて歯の動きが良いため、治療期間が短く済む可能性があるが、矯正治療期間中の審美性低下による心理的なデメリットがあり、大学などの進路によっては転院が必要な場合もある
- 中高生が受ける歯列矯正には、ワイヤー矯正とマウスピース矯正がある
- ワイヤー矯正はほぼすべての症例が適応となるが、矯正期間中の審美性が劣る・清掃が難しいなどのデメリットがある
- マウスピース矯正は審美性も清掃性も優れているが、長時間の装着するための自己管理が必要で、適応となる症例がワイヤー矯正より狭い
口の中の状態は一人ひとり違うため、「開始は何歳から」と一概にいうことはできません。また一方で、矯正歯科治療は「いつからでも」始められるものです。
矯正歯科治療を始めるタイミングで迷っている方は、まずは当院の診察にてご相談ください。担当医が丁寧に対応させていただきます。