セラミック治療のやり直しにはどんな負担やリスクがあるの?予防策も紹介
セラミック治療は審美性の高い補綴治療ですが、治療効果は永続的ではなく、やり直しが必要になる場合もあります。
それでは、どのようなときにセラミック治療のやり直しが必要なのでしょうか。また、どのようなリスクがあるのでしょうか。
この記事では、セラミック治療のやり直しについて解説します。
この記事を読むことで、セラミック治療でやり直しが必要になる具体的なケースや治療の選択肢、やり直しに伴うリスクや予防策などを理解でき、下記のような疑問や悩みを解決します。
こんな疑問を解消!
- セラミック治療のやり直しが必要になる症例
- セラミック治療をやり直す際の選択肢
- 生活歯と失活歯における治療の流れと違い
- セラミック治療をやり直す際の費用とリスク
- セラミック治療のやり直しを防ぐ方法
セラミック治療のやり直しが選択される場合
セラミック治療をやり直しが選択される場合についてご説明します。
二次齲蝕
二次齲蝕とは、虫歯の再発のことです。
セラミッククラウンの支台歯に齲蝕が再発すると、セラミッククラウンの保持力が低下するだけでなく、生活歯の場合歯髄炎を引き起こすこともあります。またう窩(齲窩)での細菌が繁殖にともない、歯周病や口臭の原因にもなります。
この場合、齲蝕治療のためにセラミッククラウンを外さなくてはなりません。
歯周病
歯周病は、歯周組織に生じる病気の総称です。
セラミッククラウンの形態がプラークコントロールに適したものでない場合、セラミッククラウンのマージン付近を中心に歯周病が発症します。歯周病を改善するためには、セラミック治療をやり直さなくてはならなくなることもあります。
根尖性歯周炎
根尖性歯周炎は、根尖に膿瘍を形成する病気です。
根尖性歯周炎のほとんどは自覚症状はありませんが、急性化すると咬合痛や歯肉腫脹などを生じます。根尖性歯周炎の治療として感染根管治療が行われますが、そのためにはセラミッククラウンを除去する必要があります。
色調や形態への不満足
セラミッククラウンの色調や形態に満足ができない場合、修正はとても困難です。
色調や形態に満足が得られない場合は、セラミック治療をやり直し、新しくセラミッククラウンを作り直さなくてはなりません。
破損
転倒や打撲などの外傷、咬合習癖、咬合性外傷など、さまざまな原因でセラミッククラウンは破損するリスクがあります。修理可能な破損であればいいのですが、修理が難しい破損であれば、セラミック治療をやり直さなくてはなりません。
歯肉退縮
歯周病が進行すると歯肉退縮を起こします。また歯周病でない健康な歯周組織であっても、年齢とともに少しずつ歯肉退縮が生じることが明らかになっています。
歯肉退縮すると、セラミッククラウンのマージンが露出することになります。セラミッククラウンのマージンの露出が気になる場合は、退縮した歯肉にマージンを適合させるようにセラミック治療をやり直す必要があります。
セラミック治療の選択肢
セラミック治療をやり直す場合の選択肢としておすすめは、ジルコニア・オールセラミッククラウンとe-max(イーマックス)です。
どちらも金属材料を一切使わないため、金属アレルギーや歯肉変色のリスクがなく、色調の面でも優れています。
ジルコニア・オールセラミッククラウン
ジルコニア・オールセラミッククラウンは、ポーセレンの外層とジルコニアというセラミックの内面フレームで構成されたオールセラミッククラウンです。
ジルコニアは人工ダイヤモンドとも呼ばれる、透明度と強度を両立させたセラミック材料です。ポーセレンの強度上の弱点を、内側のジルコニアが補強しています。またジルコニアを内面フレームに採用することで、透明感が高まり、天然歯に似た自然感が得られます。
e-max(イーマックス)
e-maxは、ニケイ酸リチウムガラスセラミックで作られたオールセラミッククラウンです。ガラス系のセラミック材料なので透明度の高さが利点です。また、e-maxは単一材料のオールセラミッククラウンなため、強度の点でも優れています。
その反面、単一材料であるために天然歯のようなグラデーションを与えるのが難しいですし、透明度の高さにより、支台歯の色が十分遮蔽できないこともあります。
セラミック治療のやり直しの流れ
セラミック治療をやり直す場合の治療の流れについて、生活歯と失活歯に分けてご説明します。
治療前
治療前には、歯科医師の問診、検査、診断の流れで進んでいきます。
- ①問診
セラミッククラウンのどのような点に満足いかないのか、既往歴やアレルギー歴、咬合習癖はないかなどを問診します。 - ②検査
歯や歯周組織、歯列の状態、咬合関係を視診や触診、レントゲン撮影などにより詳しく検査します。 - ③診断
検査を通して歯の状態を診断し、セラミック治療をやり直す方がいいのかどうかを診断します。 - ④治療前の説明と同意
診断によりセラミッククラウンの再治療の適応があると判断された場合、治療に伴うリスクや治療費、治療期間などを含めて詳しく説明します。このとき、症例によっては歯列模型を使って、治療後の新しいセラミッククラウンの形状について説明することもあります。治療計画に納得いただければ、セラミック治療に進みます。
生活歯
生活歯の場合の治療の流れです。
- ①暫間被覆冠(セラミッククラウンの形状を模した仮歯)の製作
- ②セラミッククラウンの除去
- ③支台歯形成
- ④印象採得と咬合採得
- ⑤シェードテイキング(色調確認)
- ⑥暫間被覆冠を装着
- ⑦完成したセラミッククラウンの装着
- ⑧経過観察
失活歯
失活歯の場合の治療の流れです。
- ①暫間被覆冠(セラミッククラウンの形状を模した仮歯)の製作
- ②セラミッククラウンの除去
- ③感染根管処置
根尖病巣を認める場合は、まず感染根管処置を行います。
根尖病巣が認められなければ、次のステップに進みます。 - ④ファイバーポストの製作と装着
- ⑤支台歯形成
- ⑥印象採得と咬合採得
- ⑦シェードテイキング(色調確認)
- ⑧暫間被覆冠を装着
- ⑨完成したセラミッククラウンの装着
- ⑩経過観察
セラミック治療のやり直しの費用
セラミック治療をやり直す場合、費用はどうなるのでしょうか。
保証あり
やり直しの対象となるセラミッククラウンを装着した歯科医院で、セラミック治療をやり直す場合、当該セラミッククラウンの保証の有無についてまず確認してみましょう。
保証期間や保証の範囲は、各歯科医院で異なりますが、それによってやり直しの費用を抑えられることがあります。
保証なし
やり直すセラミッククラウンを、セラミック治療を受けた歯科医院以外で作り直す場合には保証はありません。
詳しい金額はそれぞれの歯科医院でご相談いただく必要がありますが、オールセラミッククラウンの場合、一般的には1本あたり10〜15万円前後が相場です。
セラミック治療のやり直しに伴うリスク
セラミック治療をやり直す場合のリスクについてご説明します。
歯根破折
例えば、やり直すセラミッククラウンが失活歯でメタルコアが入っている場合、審美性を高めるためにはメタルコアを除去しなければなりません。
メタルコアの形状によっては、メタルコアを除去する際に歯根破折を生じるリスクが避けられません。歯根破折を起こした場合、破折の位置や方向によっては抜歯しなければならなくなることもあります。
歯髄刺激
やり直すセラミッククラウンが生活歯に装着されている場合、生活歯のままセラミッククラウンを作り直すと、支台歯の形状によっては支台歯形成により歯髄が刺激されます。
歯髄刺激の強さにより、歯髄炎や知覚過敏を引き起こす可能性があります。
治療費
セラミッククラウンは保険診療の適用外治療ですので、保険診療の治療と比べると治療費が高額になります。セラミック治療をやり直す場合も、やはり高額な治療費がかかることになります。
セラミック治療をやり直さないための予防法
セラミック治療のやり直しリスクを減らすための予防法をご説明します。
術前の十分な診察・相談
セラミッククラウンを入れた後、色調や形態に納得がいかないという事態を避けるためには、セラミッククラウンを装着する前の診察・相談を充実させることが大切です。
形態なら、セラミッククラウンを装着する前に、セラミッククラウンを模した暫間被覆冠(仮歯)をつけてみて治療後の形を確認するとわかりやすいです。色調は、シェードガイドで色調を確認するだけでなく、隣在歯や対合歯の歯冠色に合わせてみる、グラデーションを再現するなどの方法もあります。
術前に診察と相談をしっかりと行うことが、治療後の不満を予防する上でとても重要です。
ブラッシング
セラミッククラウンはプラークがつきにくく、衛生面で優れているのですが、全くつかないわけではありません。適切なブラッシングによりプラークコントロールを図らなければ、二次齲蝕や歯周病のリスクは避けられません。
セラミッククラウンを装着したのち、適した歯ブラシや歯間ブラシ、デンタルフロスを使って、適切なブラッシング法を指導してもらいます。こうすることで、日常のブラッシングによるプラークコントロールの効果を高めることも、二次齲蝕や歯周病のリスクを減らすポイントです。
歯のクリーニング
適切なブラッシングを心がけていても、どうしても取りきれないプラークは存在しています。また、歯石のようにブラッシングでは取れない、しかもプラークの付着する温床となるものもあります。
そこで、セラミッククラウンを装着したのちは、定期的に歯科医院で歯のクリーニングを受けることが大切です。
定期検診
歯は、実は常に動いています。このため、セラミッククラウンを装着した当時の咬合関係も、時間の経過とともに変化します。
不適切な咬合関係を認めた場合は、適時咬合調整をしてもらわなければ、セラミッククラウンの破損の原因となります。定期的にセラミッククラウンの咬合状態を確認することも、セラミッククラウンの予後を改善するために欠かせません。
【まとめ】セラミック治療のやり直しにはどんな負担やリスクがあるの?予防策も紹介
セラミック治療のやり直しが必要なケースや治療に伴うリスク、やり直しを減らす方法などを解説しました。
この記事では、下記のようなことが分かったのではないでしょうか。
ここがポイント!
- セラミック治療のやり直しが必要になる例としては、二次齲蝕、歯周病、根尖性歯周炎、色調や形態への不満、破損、歯肉退縮などがある
- セラミック治療をやり直す際は、ジルコニア・オールセラミッククラウンやe-maxが良い選択肢となる
- 治療をやり直す場合、生活歯では暫間被覆冠製作→セラミッククラウンの除去→支台歯形成へと進むが、失活歯では暫間被覆冠を製作してセラミッククラウンを除去した後、感染根管処置とファイバーポストの製作を経て支台歯形成へ進む流れとなる
- セラミッククラウンを装着した歯科医院で治療をやり直す場合、当該セラミック歯に保証があれば費用が抑えられる可能性がある
- 別の歯科医院でセラミック治療をやり直す場合は保証が受けられない
- セラミック治療のやり直しには、歯根破折や歯髄刺激などのリスクがある
- 治療のやり直しを防ぐためには、術前に十分な診察・相談を受けること、日々のブラッシングでプラークコントロールをすること、定期的な歯のクリーニングや定期検診を欠かさないことなどが大切
セラミック治療はやり直しが必要になる場合もありますが、治療前や治療後の対策でやり直しのリスクを最小限に抑えることは可能です。この記事で紹介した予防策により、セラミッククラウンのやり直しを防ぎましょう。
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