接着性ブリッジのメリットとデメリットと適応範囲

う蝕や抜歯で歯が失われた場合、歯科医師は大きく分けて以下の3つの方法を提案します。
- 部分用義歯
- ブリッジ補綴
- 歯科用インプラント
それぞれに利点欠点があります。
部分用義歯は着脱式のため、清掃性が高いところが利点としてあげられます。しかし、人によっては異物感が強く特に若年者は好まない傾向にあります。
いっぽう、ブリッジは欠損部にダミーの歯(ポンティック)を置き、その隣在歯を削ってポンティックの橋渡しをおこないます。ブリッジ補綴はポンティックが隣在歯と一体化することによって異物感が解消することが利点としてあげられますが、強い維持を求めるために健全な隣在歯を削る必要性があります。
顎骨に直接打ち込む歯科用インプラントはもっとも異物感が少ないですが、煩雑な外科手術とコストがかかります。
どれをとっても欠点が存在し、患者さんや歯科医師を悩ませてきました。
そこで昨今、それぞれの欠点を最小限に留め、利点を存分に引き出した選択肢が急速に浮上してきました。
それが「接着性ブリッジ」です。
最近何かと話題になるこの「いいとこどり」の治療についてご紹介いたします。
目次
接着性ブリッジとは
接着性ブリッジとは、通常のブリッジ補綴の欠点である、隣在歯の切削を最小限に抑えた補綴物です。切削部位は主に歯の舌側面のみであり、ブリッジのように歯の全周を切削する必要性はありません。
また、ブリッジ補綴の利点である、違和感の少ない補綴物であるという条件を網羅したものでもあります。
従来のブリッジ治療は歯のエナメル質よりもさらに下層に存在する象牙質まで切削する必要性がありましたが、接着性ブリッジは歯の表層であるエナメル質の切削をわずかに行うのみです。
健全歯の切削に抵抗のある方でも簡単に取り入れられる治療法でもあり、現在人気の治療法でもあります。従来のブリッジ治療よりも大幅に欠点がカバーされたように思われがちですが、そんな接着性ブリッジにもやはり利点と欠点は存在します。
接着性ブリッジのメリットとデメリット
以下は2017年2月24日に日本補綴歯科学会が発行した「接着ブリッジのガイドライン 改訂版」を参考にしています。
接着性ブリッジのメリット
まずは、メリットについてです。
代表的なものは、やはり健全な歯質を切削する量が少なく済み、かつ審美性も担保されているという点です。
従来のブリッジ治療は審美性の高いものを使用する場合、金属を用いずに強度を持たせ、かつ審美性を高めるために、ジルコニアやセラミックといった白い材料で統一したブリッジがあります。
しかし、このブリッジは強度を持たせるうえに、歯のエナメル質が本来持ち合わせる透けるような白さと濁ったような象牙質の黄白色を表現するためにもブリッジに厚みが必要になります。
そのため、審美性の高いブリッジはより健全歯を切削する必要性があります。
いっぽう、接着性ブリッジは隣在歯のエナメル質をわずかに切削し、本物の歯のように作られたポンティックにウイングをつけ、そのウイングを切削した歯の舌側面にはりつけるだけで橋渡しが完了となります。
接着性ブリッジのデメリット
次に、デメリットについてです。
ひとつめに、適応となる症例に限りがあるということです。
少数歯中間欠損で、支台歯の候補がエナメル質が十分に残存した生活歯である患者とする。
と本文に記載されています。
これはつまり、欠損歯が多い部分に対して接着性ブリッジを適用することは推奨されないということです。
理由は従来のブリッジ治療のように、削った歯の上からブリッジをかぶせるような強い維持力が接着性ブリッジには求められず、維持のほとんどを専用の接着材のみで負担しなければならないためです。
日本補綴歯科学会はとくに2歯以上の欠損歯に対する使用を推奨していません。
ふたつめに、
強い咬合力の予測される症例に対して、接着ブリッジの適用を行わないことを強く推奨する。
と本文にあります。
上述したように、維持力のほとんどを接着材でカバーしているため、臼歯部などに対して適用することを勧めていません。
以上のように適用となる範囲が従来のブリッジ治療と比較すると狭い傾向にあります。
接着性ブリッジの最近の報告と今後の展望
接着ブリッジは理論・技術ともにまだまだ未完成な歯科用接着法を応用した術式のうえ同時期に出現した各種の接着性補綴物の中ではもっとも厳しい条件下で使用されることから、現在にいたるまで脱落防止が重要な課題である。
田中卓男, 吉田圭一, 松村英雄, 熱田充. 「接着ブリッジの設計と構造」. 長崎大学歯学部歯科補綴学第1講座. 1991年, Vol.9, No.1, p.1-7. https://www.jstage.jst.go.jp/article/adhesdent1983/9/1/9_1_1/_pdf, (参照 2019-6-15)
上述の引用のように、近年まで、接着性ブリッジは維持のほとんどを接着材のみに求めていたため、従来のブリッジ治療に比べると脱落率が高いようでした。
しかし、最近では接着材の強度も増し、歯面に接着するウイングの設計に対する研究も進みました。よって、より強固で脱落しにくい接着性ブリッジが普及しています。
また、以前まではウイングの材質は金属が一般的でしたが、白くて強度の高いジルコニアの出現でウイングも白に統一することが可能になり、ますます審美性の高いものも増えてきました。
今後の研究次第では、欠点であった適応症例に限りがあるという点もカバーされるのかもしれません。
【まとめ】接着性ブリッジのメリットとデメリットと適応範囲
以上のように、部分用義歯や従来までのブリッジ治療と同じように、接着性ブリッジにも利点や欠点があります。
また、接着性ブリッジが適応となるケース、適応とならないケースもさまざま存在します。
自分が適応症例となるのか、判断するのは難しいので、くわしくは専門医に直接診てもらいましょう。