インビザラインで出っ歯は治らない?出っ歯への適応について解説
上顎前突症、いわゆる出っ歯は、前から見た口元の印象だけでなく、口元が飛び出すことで横顔にも影響します。
上顎前突症を改善すると、口元が引っ込み、相対的に鼻が高くなるなど、横顔もきれいになることが多いです。
上顎前突症の矯正治療の方法はいくつかありますが、近年注目を集めているのが、マウスピース矯正です。
そのマウスピース矯正の代名詞とも言えるのが、インビザラインです。
この記事では、インビザラインでの上顎前突症の治療について解説します。
この記事を読むことで、インビザラインの特徴や上顎前突症に対する適否について理解でき、下記のような疑問や悩みが解決します。
こんな疑問を解消!
- 上顎前突症の種類
- インビザラインで治療できる上顎前突症
- インビザラインでは治らない上顎前突症
- インビザラインでの上顎前突症の治療の方法
- インビザラインでの治療上の利点と問題点
- インビザラインで治療できない上顎前突症
出っ歯(上顎前突症)の種類
上顎前突症は、大きく分けると歯性上顎前突症と骨格性上顎前突症の2種類に分けられます。
いずれの上顎前突症も、鼻より下あたりが大きく飛び出した横顔になります。
歯性上顎前突症
歯性とは、“歯に原因がある”という意味です。
歯性上顎前突症は、歯の傾きや位置のずれによって出っ歯になっている上顎前突症です。
下記の3タイプがあります。
- ❶上顎の前歯が外側(唇側)に向かって傾斜しているタイプ
- ❷下顎の前歯が内側(舌側)に向かって傾斜しているタイプ
- ❸その両方が起こっているタイプ
歯性上顎前突症の原因は、舌で前歯を押す舌の癖、爪を噛む癖、指しゃぶりなど、癖によるものが多いです。
骨格性上顎前突症
骨格性とは、“骨格(顎骨)に原因がある”という意味です。
骨格性上顎前突症は、顎の骨格の形態や大きさ、位置関係に異常があり、このために出っ歯になった上顎前突症です。
下記に分けられます。
- ❶上顎骨全体が大きく、前にずれているタイプ
- ❷下顎骨の位置が後ろにずれているタイプ
骨格性の上顎前突症では、歯の向きや位置にもずれがみられることも多いです。
インビザラインで改善できる上顎前突症について
いずれの上顎前突症もインビザラインで改善できるわけではありません。
インビザラインは、歯を移動させて歯並びを整える矯正治療法です。
したがって、インビザラインで対応できる上顎前突症は、現在のところは歯を移動させることで改善できる歯性上顎前突症だけです。
顎の骨格に原因のある骨格性上顎前突症の治療は、インビザラインでの治療は困難とされています。
インビザラインでは骨格性上顎前突症の治療が困難な理由
骨格性上顎前突症をインビザラインで改善できない理由について説明します。
顎矯正手術が必要
インビザラインは、歯を移動させる矯正治療法です。
骨格性上顎前突症の場合は、歯列不正の原因となった骨格の形態や大きさを改善させなければなりません。骨格を整える治療法は、顎矯正手術という外科手術です。
顎矯正手術の前後で矯正治療をして、あらかじめある程度歯並びを整えておくのですが、このときに行われるのは、マルチブラケット矯正というワイヤーとブラケットを使った矯正治療です。
こうしたことから、インビザラインでの骨格性上顎前突症治療は困難です。
顎間固定ができない
顎矯正手術では顎の骨の形を整えるのですが、手術後は一定期間、顎の骨格の安静を図るため、顎間固定という処置を行います。顎間固定とは、上顎と下顎の歯並びをゴムで固定して動かなくする処置です。
インビザラインのようなマウスピース矯正では、顎間固定ができません。手術後の安静を図るためには、マルチブラケット矯正でなければならないのですが、手術後の腫れや痛みの大変な時期に歯にブラケットやワイヤーをつけるわけにはいきません。そのため、手術前からマルチブラケット矯正で歯並びを整えておく必要があります。
この点からも、インビザラインでの骨格性上顎前突症の治療は難しいです。
インビザラインでの上顎前突症の治療法
インビザラインでの上顎前突症の治療法は、抜歯矯正と非抜歯矯正に分けられます。
抜歯矯正
抜歯矯正は、前に出た前歯を後方に下げるために永久歯を抜歯して、前歯を収めるスペースを確保する方法です。前歯を収めるスペースが不足する場合に行われることが多いです。
一般的に抜歯の対象として、第一小臼歯という前から4番目の歯が選ばれることが多いのですが、歯の状態によっては、その後ろの第二小臼歯を選ぶこともあります。
小臼歯を抜歯して得られるスペースはかなり大きいので、これだけのスペースを得られれば上顎前突症を十分改善できます。
非抜歯矯正
歯の位置のずれが少ない場合は、抜歯をする代わりに歯のエナメル質を0.1㎜単位で削って歯を並べるスペースを確保する方法があります。この処置はIPR(Inter Proximal Reduction)と呼ばれています。
IPRで歯を削る量は、1.0㎜にも満たない量です。この量なら歯の形の変化もほとんどわかりませんし、しみたり虫歯になったりするリスクもほとんどありません。
しかし、歯の両サイドの面を0.5㎜削ると、1.0㎜のスペースが得られます。もし、前歯部6本削れば6㎜です。チリも積もればという言葉通り、少しずつでも意外と広いスペースが得られます。この範囲で収められるなら、抜歯せずに上顎前突症を治すことが可能です。
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治療期間
インビザラインで上顎前突症を治した場合、治療期間はおおむね3年前後です。
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インビザラインでの治療上の利点
インビザラインで上顎前突症を治療した場合の利点について説明します。
治療計画がシミュレーションできる
インビザラインでは、術前に歯がどのように移動し、最終的にどのような歯並びになるのかをクリンチェックというアプリケーションでシミュレーションします。マウスピースの交換数や治療期間についても、シミュレーションで決まります。
歯の移動の仕方がコンピューターの画面上で再現されるので、治療の進み方も見える化され、たいへんわかりやすくなっています。
目立たない
インビザラインのマウスピースは、透明度が高いうえ、薄く、歯に緊密にフィットしています。装着していても、一見しただけでは分からないほど目立ちません。
外せる
インビザラインは、マウスピースを矯正装置として利用しています。
食事や歯磨きのときに、ご自身で付けたり外したりできますので、日常生活にはほとんど影響しません。
痛みが少ない
インビザラインでは、マウスピースから歯に弱い力を与えて歯を移動させていきます。
歯の痛みには個人差がありますが、従来型の矯正治療と違いシミュレーション結果に合わせてコンピューターが自動的にマウスピースを作り、矯正力が一定の強さで安定しているので、歯の移動による痛みが少なく抑えられます。
インビザラインでの治療上の問題点
インビザラインで上顎前突症を治療する上での問題点について説明します。
自己管理が不可欠
インビザラインは、ご自身でマウスピースを着け外ししなければなりませんし、一定期間使えば、新しいマウスピースに交換しなければなりません。
ご自身でのマウスピースの管理をしっかり行わなければ、矯正治療の効果が得られないのが、インビザラインをはじめとするマウスピース矯正の難点といえます。
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傾斜移動になりやすい
矯正治療での歯の移動は、平行に移動する歯体移動と傾きながら移動する傾斜移動に分けられます。インビザラインに限らず、マウスピースを使った矯正治療では、矯正力の加わり方の関係で傾斜移動になりがちです。歯の移動距離が短ければ、少々傾斜移動しても傾きが目立たないので歯をきれいに並べられますが、移動距離が長くなると傾斜が目立ってしまいかねません。
抜歯矯正の場合は歯の移動距離が長くなるので、傾きも大きくなりやすいです。
せっかく抜歯して前歯を収めるスペースを確保できても、傾斜移動となると歯がきれいに並ばなくなってしまいます。
インビザラインなどのマウスピース矯正は、傾斜移動になりやすいのが難点のひとつです。
上下方向の歯の移動が難しい
歯性上顎前突症でも、歯の位置が上下方向にずれていることがあります。
インビザラインに限ったことではないのですが、マウスピース矯正は歯を上下方向に移動させることは苦手です。特に、歯を押し下げる圧下は一層困難です。
インビザラインでは、アタッチメントという小さな突起物を歯に接着することで、上下方向の歯の移動を可能にしています。
奥歯の噛み合わせへの影響
インビザラインのようなマウスピース矯正では、歯の噛み合わせ面にも薄くマウスピースがのります。
奥歯で噛み合わせると、マウスピースの厚み分だけ歯が圧下する可能性があります。
【まとめ】インビザラインで出っ歯は治らない?出っ歯への適応について解説
インビザラインでの上顎前突症の治療について解説しました。
この記事では、下記のようなことがご理解いただけたのではないでしょうか。
ここがポイント!
- 上顎前突症は、歯性上顎前突症と骨格性上顎前突症に分けられる
- インビザラインで治療できるのは、歯性上顎前突症である
- 骨格性上顎前突症は顎矯正手術と顎間固定が必要で、インビザラインでの対応は難しい
- インビザラインでの上顎前突症の治療法は、抜歯矯正と非抜歯矯正の2種類である
- 上顎前突症をインビザラインで治療するメリットは、“目立ちにくい” “治療計画のシミュレーションが可能” “矯正装置の取り外しが可能” “痛みが少ない”など
- 問題点は“自己管理が不可欠” “傾斜移動になりやすい” “上下方向の移動が苦手” “奥歯の噛み合わせへの影響”など
上顎前突症いわゆる出っ歯は、横顔の見た目にも影響するので矯正治療のニーズが多い歯列不正のひとつとして知られています。
そして近年、インビザラインに代表されるマウスピース矯正が注目されています。
インビザラインには、従来型の矯正治療にはない優れた特徴があり、上顎前突症の治療にインビザラインを検討していらっしゃる方も多いです。
上顎前突症の治療は、歯性上顎前突症ならインビザラインでの矯正治療が期待できます。
インビザラインでの上顎前突症の治療には治療の可否の判断が重要で、専門的な知識に加え、治療経験や専門的な技術が欠かせません。
南青山矯正歯科クリニックには、出っ歯でお悩みの方に多くご来院いただいております。また、患者様のご希望をお伺いしたうえで、複数ある歯科矯正の中から最適な治療法をご提案させていただいております。
上顎前突症でお悩みの方で、インビザラインでの治療を考えている方は、ぜひ当院にお越しください。