オールセラミックで失敗と後悔をしないために把握しておきたいリスクと対策
色調の再現性に優れ、天然歯のように透明感があり、セラミックの中でも特に自然で美しく前歯の治療に適しているオールセラミック。
「歯の治療をするなら審美性が高いオールセラミックにしたい」という方も多いでしょう。
多くの方が憧れるオールセラミックですが、治療を受けた後に「オールセラミックにしなければよかった」と失敗や後悔を感じる方もいるようです。
この記事では、オールセラミックの失敗例と治療のリスクについて解説します。
この記事を読むことで、オールセラミック治療で後悔しないために、事前に知っておくべき注意点を理解でき、下記のような疑問や悩みを解決します。
こんな疑問を解消!
- オールセラミックのメリットは?
- オールセラミックのデメリットは?
- オールセラミック治療で失敗して後悔するケースとは
- オールセラミック治療を受けるリスクは?
オールセラミック治療のメリットとは?
オールセラミック治療とは、陶器と同じセラミックのみで作成されたインレー(詰め物)やクラウン(被せ物)などの補綴物による治療方法です。
具体的には、う蝕(虫歯)治療後の欠損部を補う際に用いられる治療方法です。
補綴物には、金属冠や、硬質レジン前装冠、メタルボンドクラウンなどいくつかの種類がありますが、オールセラミックは理想的な素材の1つです。
例えば、以下のようなメリットなどが挙げられます。
- ❶最も天然歯に近い透明感と白さを再現できる
- ❷歯の形態を美しく作ることができる
- ❸経年変化による色調の黄ばみや黒ずみが少ない
- ❹メタルタトゥーといわれる歯肉への金属イオンの流出による着色がない
- ❺口腔内の環境において安定した素材
オールセラミック治療のデメリットとは?
しかし、審美性や安全性が高いオールセラミックにもデメリットはあります。
脆性が大きく衝撃に弱い
金属冠と比べて金属の裏打ちがないため、割れる可能性があります。
費用負担が高額
基本的に、オールセラミックの治療方法は、審美歯科領域のため保険適応外です。
歯科医院によって価格設定が異なりますが、相場は1本8〜18万円程度と幅が広いです。また補綴物1本の値段だけではなく、再診料や、検査費用、印象採得(歯型取り)、仮歯などすべての項目が私費価格になるため、治療前には総額を見積もることが大切です。
抜髄が必要な場合がある
咬み合わせの関係で、クリアランス(補綴物を入れるスペース)が足りない場合には、形成量が多くなります。結果、土台となる歯の神経を取り除く処置(抜髄)が必要になります。
抜髄により神経が失活した歯は、歯根破折のリスクが天然歯に比べて増加します。オールセラミック治療に伴う抜髄の場合には、抜髄自体も私費のため費用負担が発生します。
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形成量が多い
オールセラミックの場合には、クラウンやブリッジなどを割れにくくするために、補綴物自体に厚みが必要です。補綴物の厚みを確保するには、土台となる歯を削る必要があります。歯を削る量(形成量)は、金属冠に比べて多くなります。
知っておきたいオールセラミック治療の失敗例とリスク8選
時間や費用をかけても、オールセラミック治療が失敗することもあります。万が一の失敗に備えて、オールセラミック治療を受ける前に、失敗例を学んでおきましょう。
1.セラミックであることがわかりやすい・・・
審美性に優れるオールセラミックであっても、隣り合う歯とシェード(色調)が異なる場合や、一部のみをオールセラミックにしたため、他の歯とのバランスが取れていない場合、「セラミック治療をやりました!」という口元になってしまいます。
特に色調については、失敗が起こりやすいです。歯科医師がお勧めした色よりも、せっかくだから・・と、もっと白くすることを希望する方がいらっしゃいます。そういった場合には、残念ながら色調の不一致という失敗が起こりやすく後悔される方がいらっしゃいます。
2.セラミック治療を急ぎすぎた
クラウンなどの被せ物をする場合、歯肉とクラウンの境目の設定は失敗できない重要な項目です。
歯周病や歯肉炎のため、歯肉が腫脹していると、正しい位置設定ができません。オールセラミックをセットした後で、歯肉退縮が起こり、歯根が露出すると、審美的に不適であることや、根面う蝕や歯周病のリスクが発生します。
クラウンをセットすることを最終補綴ともいいます。最終補綴では、失敗を防ぐため、歯周病治療を完了し、引き締まった歯肉の状態で行うことが大切です。
3.加齢による歯肉退縮が起こる
失敗ではありませんが、歯周病に限らず、歯肉退縮は加齢によっても起こります。
最終補綴を行った後も、メインテナンスを行うことをお勧めします。
4.不適切な咬合による歯肉退縮
オールセラミッククラウンをセットした歯に対して、不適切な咬合圧がある場合には、咬合性外傷という歯周組織の破壊が起こることがあります。
その場合には、歯肉退縮や、くさび状欠損(歯頚部の歯質がくさび状に欠ける)、咬合痛が発生します。メインテナンスにより、咬合状態の確認が大切です。
5.オールセラミックの歯がう蝕になる
オールセラミッククラウンは、セメントで合着します。
経年変化により、セメントの劣化が起こり、クラウンと歯質の間に隙間ができることは避けることができません。そこからう蝕になることを2次カリエスとよびます。
オールセラミックは金属冠にくらべて2次カリエスのリスクは少ないですが、オールセラミッククラウンをセットした境目(マージン)からう蝕になるため、内部にう蝕が広がり、いつのまにか進行していることがあります。
6.オールセラミックの破折
経年変化によりほかの歯が摩耗し、咬合状態が変わり、オールセラミックに対する干渉が強くなることも想定されます。歯ぎしりや食いしばりがある場合には、審美性があり、より強度のあるジルコニアセラミックをお勧めしています。
7.歯髄炎の発症
オールセラミックの場合、形成量確保のため、神経に近接した歯の切削となった場合、治療後にしみたり、痛みを感じることがあります。そのため、抜髄治療を伴う場合があります。
抜髄を拒否される方もいらっしゃいますが、神経性の疼痛や違和感が継続することは不快なことです。
8.根尖性歯周炎のリスク
神経を残した場合、必ず失敗するというわけではありません。しかし、2次カリエスや、過度な咬合圧による歯周組織への影響など、歯の神経に細菌感染を起こすことがあります。病状が進んで、神経が失活し、根尖(歯の根っこの先)に膿が溜り、歯槽骨(歯槽突起、歯槽部)を溶かすことがあります。
これは、根尖性歯周炎という状態で、オールセラミッククラウンを除去して根幹治療を行うか、オールセラミッククラウンを残した状態で、根尖部を掻把、切除する(歯根端切除)治療を行う必要があります。
オールセラミック治療で失敗しないために大切なのは歯科医師の経験値
オールセラミックの失敗やリスクについてご紹介しました。
メリットの多いオールセラミック治療を否定しているわけではありません。歯科医師本人に診察をしてもらい、リスクやその際の対応について説明を受けることで、失敗や後悔を防ぐことができます。
特に、仕上がりイメージの共有や、先ほどお伝えした失敗を防ぐためには、TEC(テック)と呼ばれる暫間補綴物の経過をしっかりと診る歯科医師のもとで治療を行うことをお勧めします。
【まとめ】オールセラミックで失敗と後悔をしないために把握しておきたいリスクと対策
オールセラミック治療をすることで、失敗して後悔しやすい点や治療リスクなどを解説しました。
この記事では、下記のようなことが分かったのではないでしょうか。
ここがポイント!
- オールセラミックはセラミックの中でも特に審美性が高い
- オールセラミックは衝撃に弱く、割れる可能性がある
- 形成によっては抜髄の可能性があり、抜髄することによって歯根破折のリスクが高まる
- 周囲の歯に合ったシェードを選ばず、オールセラミックが目立って後悔するケースがある
- 神経を残して治療した場合も根尖性歯周炎になる可能性があり、そうなった場合はオールセラミックを除去して根管治療をするか歯根端切除をしなければいけない
セラミック治療の中でもオールセラミックは特に審美性が高く、仕上がりが美しいです。しかし、衝撃に弱く割れる可能性があったり、シェードの選択によっては審美性が高いオールセラミックでも悪目立ちしてしまったりというケースもあります。
失敗や後悔を防ぐためには、症例実績の多い審美歯科を専門とする歯科医院や歯科医師に治療を依頼するのがおすすめです。
南青山矯正歯科クリニックでは、納得のいく治療を受けていただくために診察・相談に時間を設け、患者さまのお悩みを十分にお聞きするようにしています。オールセラミックの他にも多数のセラミックをご用意していますので、噛み合わせや生活習慣など一人ひとりに適したセラミックのご提案が可能です。
治療後は2次カリエスやセラミックの破折を防ぎ、美しい状態を維持するためにも、定期的なメンテナンスにも力を入れています。