子供にガミースマイルは遺伝するの?原因と治療法も解説

今回はガミースマイル、特に子どものガミースマイルについてお伝えしたいと思います。
笑ったときや話すときに歯茎が見える状態をガミースマイルと呼びます。
少しでも歯茎が見えていればガミースマイルというわけではなく、臨床的には微笑んだとき上顎前歯の歯肉が幅3mm以上帯状に見える場合をガミースマイルと定義しており、歯と歯の間の歯茎(歯間乳頭)が見えている場合や、部分的にのみ歯茎が見えている場合はガミースマイルとは呼ばないことになっています。
ガミースマイルそのものは特に病的なものではなく見た目の問題であり、虫歯や歯周病になりやすいということもありません。
しかし、たとえば「話すときに歯茎が見えるのがコンプレックスで人前であまり笑えない」など、ガミースマイルであることにより日常生活に支障をきたす場合には治療を検討することもあります。
目次
ガミースマイルは遺伝するのか?
ガミースマイルになるかは歯、歯肉、骨格、筋肉など様々な要素が関係します。骨格や歯の形態など遺伝する要素もありますが、要素があるからといって必ずガミースマイルになるというものではありません。
ガミースマイルの治療
ガミースマイルには様々な要素が関係し、年齢も重要な要素になります。そのため、ガミースマイルの治療の際には原因のタイプに加え年齢も考慮して治療方針を決定します。
小児期の治療と成長後の治療
ここでは小児期とは成長の余地が十分にある時期のことであり、成長のピークを迎えた、あるいは超えた場合はまだ成長が続いていても成長後の治療に準じることになります。
また、小児期においてはガミースマイルのみの改善を目指した治療は一般には行われません。
ガミースマイルは様々な要素が複合した結果であり、ガミースマイル以外に生じている問題の解決が結果としてガミースマイルを改善させることになる場合や、ある時点では治療介入が不要な場合もあります。
矯正的治療
ガミースマイルの治療には矯正、外科、補綴があり、これらを単独あるいは組み合わせて治療します。小児期に可能な治療は基本的に矯正治療となり、外科や補綴は成長後に行える治療になります。
歯によるもの(原因):歯へのアプローチ
歯が原因の場合では、歯冠(歯の頭の部分)が短すぎる、歯が傾斜しすぎて出っ歯になっている(歯性上顎前突)、歯肉がかぶりすぎている、歯が出すぎている(挺出)などが該当します。
この場合の小児期の矯正治療としては、口を閉じる力が弱く、ポカン口と呼ばれる状態(口唇閉鎖不全)が原因で歯性上顎前突となっている場合にMFT(口腔筋機能療法)で改善をはかる方法があります。
成長後の矯正では、マルチブラケットや矯正用インプラントを用いた治療になります。
骨格によるもの(原因):骨格へのアプローチ
上顎骨が過剰に成長してしまっている(骨格性上顎前突)、上顎骨の歯槽部(歯が植わっている部分)が長い(過長)、骨の出っ張り(骨隆起)ができてしまい上唇がまくれ上がる、などが該当します。
骨格が原因となる場合、改善には手術が必要となることが多くなります。
小児期に骨格性上顎前突が疑われた場合、ヘッドギアで上顎の過成長を抑制することで対応することがあります。
成長後の骨格性上顎前突には顎矯正(手術を伴う矯正)が適応になります。上顎骨歯槽部過長も顎矯正適応ですが、インプラント矯正の応用により手術を回避できる場合もあります。
筋肉によるもの(原因):筋肉へのアプローチ
上唇を引き上げる筋肉の力が強すぎる場合が該当します。
この場合は矯正治療で改善をはかることはできず、成長後に後述の手術や薬物による治療が検討されることになります。
外科的治療
筋肉や骨格に問題がなく、歯と歯肉の形態や位置関係だけの問題であればクラウンレングスニングや歯肉弁根尖側移動術といった歯周外科や、補綴(被せ物での治療)の組み合わせで対応することになります。
骨隆起によるガミースマイルの場合は、骨瘤除去術という手術が適応になります。一般のクリニックで行うところは少なく、口腔外科と連携することが多いです。
筋肉によるものの場合、口腔前庭の短縮と上唇の筋肉の一部除去を行う手術を行う方法があります。こちらも口腔外科と連携して行う治療となります。ただし、この筋肉の力は加齢とともに変化し、だんだん上唇の位置は下がってくるものでもあるため、手術を選択する場合には慎重な判断が必要になります。
また、ボトックス療法により上唇を筋肉が引き上げる力を弱めて、ガミースマイルにならないようにする方法もあります。こちらは効果が半年程度のため、繰り返し行う必要があります。
【まとめ】子供にガミースマイルは遺伝するの?原因と治療法も解説
ガミースマイルは見た目に大きく影響しますが、その原因はさまざまで治療法も多岐にわたり、満足できる結果を得るには難しい治療のひとつです。子どもには必ずしも遺伝するものではありませんが、不安なこともあるかもしれません。
現状と原因をはっきりさせ、今後の見通しと最適な治療法を知るために、まずはご相談いただければと思います。