セラミック矯正の失敗と後悔を防ぐために知っておくべき6つの注意事項

セラミック矯正は、自然な口元に整えることに適した治療方法であることは、ご存じの方も多いのではないでしょうか。
具体的には、前歯をセラミック製の差し歯(クラウン)を装着する治療方法です。
口元の美しさを作り出すには適した治療方法ですが、実は、治療を受けた患者様の一部には、失敗した・・と、後悔している方もいらっしゃるようです。
セラミック矯正は、保険診療外であり費用負担が大きいこと、通院回数がかかること、ご自身の歯を削ることなど、デメリットについても理解して治療を受けることが大切です。
まずは、セラミック矯正について、しっかりと知識を持つことが重要です。
今回は、失敗したと感じ、後悔しないセラミック矯正を受けるにあたっての6つの注意事項をお伝えします。
目次
セラミック矯正だから失敗するリスクが高いわけではない
インターネット上の検索ワードには、「セラミック矯正 失敗」、「セラミック矯正 後悔」といったネガティブな履歴が散見されます。しかし、セラミック矯正は、他の治療方法と比べても、特段危険性が高い治療方法ではありません。 基本的には、通常のクラウンと同じで、素材がセラミックであるということで、失敗が起こりやすい治療法ではありません。
前歯のセラミック矯正の主流は?
セラミック矯正では、クラウンの材質によって価格帯が異なります。単純に審美性によって選択することもできますが、咬合状態や、アレルギーにも注意が必要です。
特に前歯には、オールセラミックかジルコニアセラミックが選択されています。
オールセラミックもジルコニアセラミックも、色調の種類、透明感や、ツヤの具合について再現することに優れているため、他人と向き合う前歯には適した素材と言えます。
ご自身で歯ぎしりを自覚している方や、力仕事やスポーツなど食いしばりを行う場合には、強度にも優れたジルコニアセラミックが適しています。ご家族に歯ぎしりを指摘されたことがなくても、歯科医師が確認すると、歯の咬合面や切端といった部分がすり減った状態になっている人がいらっしゃいます。そのような場合にはジルコニアセラミックを選択する方がよいでしょう。
ジルコニアセラミックによるクラウン以前には、私費診療の審美性に優れたクラウンとは、メタルボンドが主流でした。
メタルボンドは、審美性には優れていますが、フレームに金属を使用しているため、金属色が透けてしまうこと、経年変化によりメタルタトゥーと呼ばれる金属イオンの歯肉への流出が起こり、歯肉が黒ずむリスクがあります。セットして数年は満足していても、歯肉の黒ずみを発見し、失敗したと感じることもあるかもしれません。
また、メタルボンドは、これまで金属の補綴物による治療を行ったことがない人には、金属アレルギーについても確認することが大切です。金属の時計やアクセサリーを付けると、発赤や発疹が出るという方は、治療前に歯科医師に伝えておきましょう。
セラミック矯正で失敗して後悔しないためのキーポイントとは
セラミック矯正といえば、見た目(審美性)の改善です。もちろん、天然歯に近い色調や透明感、形態を付与できることは、セラミック矯正の審美性に優れたメリットと言えます。
実は審美性とともにキーポイントとなるのは、咬み合わせ(咬合)です。
咬み合わせとは、ただ上下の歯が当たればよいというものではありません。
食べ物を裁断する、構音に関わるといった機能面が満たされなければ、日常的に痛みや違和感を生じます。
咬合の問題は、顎関節まで影響を起こし、顎関節症の発症を含めた開口障害や、頭痛、肩こりにもつながる危険性があります。
多くの歯科医院では、セラミック矯正について、まずはカウンセリングから実施しているところが多いです。カウンセリングの際に、審美性の他に、機能性を重要視して検査や補綴物(クラウンやブリッジ)を製作する姿勢のある歯科医師を選ぶことが大切です。
続いて、セラミック矯正を受ける際の注意するべきポイントを6つご説明いたします。
①【機能性】咬合を重視する歯科医師を選ぶ
セラミック矯正を行いたい患者様の主訴は多くの場合、「前歯の歯並びをきれいにしたい」、といった審美的な問題が多いようです。
確かにセラミック矯正には審美性という優れたメリットがありますが、適切な咬合を付与する機能性についても改善することが大切です。
セラミック矯正治療を行う予定の歯科医師が、審美性と併せて、咬合をしっかりと適切に付与する治療を行っているかを確認することが重要です。咬合を重視する歯科医師は、仮歯(テック)の調整時に、上下に咬み合わせるほかに、歯ぎしりをした際にも違和感がないかなど実際に試用する期間を設けて確認を行います。仮歯の時点で、調整をしっかり行う歯科医師であれば、セラミック矯正のセット時においても、微調整程度で違和感なくセットすることが可能です。
患者様サイドとしては、仮歯の時点で、前歯で咬みにくい、話しにくい、唇が閉じにくいといった不具合がある場合には、我慢せずに伝える事が大切です。歯ぎしりの自覚がない場合でも、寝起きに前歯のあたりに違和感がある、顎が痛かったという症状も遠慮せずに伝えしましょう。
②【審美性】調和する色合いを選択すること
セラミック矯正は、時に「セラミック矯正しちゃいました!」という感じに、他の歯と比べて白さが際立つことがあります。隣や咬みあう天然歯の色合いを参考に色調(シェード)を選択することが重要です。
基本的に、日本人には歯科医院で使用するシェードガイドの主流であるVITAシェードのA2~A3程度が多いといわれています。しかし、治療前に歯科医師からA3をすすめられても、せっかくだから・・A1にしたいというご希望の方もいらっしゃいます。本当に些細な色の違いですが、最終的に口腔内にセットした際には隣在歯とのシェードの違いは大きく目立ち後悔してしまうことがあります。
しっかりと歯科医師と完成時の色調や形態について、認識合わせを行いましょう。
現在のご自身の歯の色調に満足していない場合には、先にホワイトニングを実施して、ワントーン明るくしてからセラミック矯正のシェード合わせをすることも可能です。
③セラミック矯正は歯を削る
セラミック矯正では、クラウンの厚み分、ご自身の歯を削る(形成)必要があります。
④神経の処置(抜髄)や抜歯が必要かもしれない
特に、生活歯(神経がある歯)の場合には、形成量を確保するために神経の処置(抜髄)が必要なことがあります。
抜髄は、形成量や歯軸の傾きによって、必要なケースと不要なケースがあるのです。抜髄が必要なケースにおいて、抜髄を行わずにクラウンをセットしてしまうと、セメントで合着後に、咬みわせると痛みや違和感といった神経症状が発生してしまいます。
残念ながら、抜髄をするということは、歯の神経が失活する=死んでしまうことです。そのため、歯の神経が生きている歯(生活歯)と比べて、歯根破折の危険性が高くなり、歯の寿命に影響が出てきます。
また、歯列から外れて歯が重なって生えている場合や、唇側に飛び出ている八重歯の場合には、クラウンの歯軸設定が困難なため、抜歯を行うケースもあります。
抜歯して歯がない部分には、ポンティックと呼ばれるダミーの歯を設計し隣り合う歯に連結するブリッジとなります。抜歯や抜髄を行った場合、もちろん、抜けた歯や神経を元通りにすることはできません。後悔しないためにも処置内容をしっかりと理解して受けることが大切です。
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⑤セラミック矯正中の痛み
セラミック矯正の場合、補綴物のスペース分、ご自身の歯を切削する形成が必要です。
その際に、神経の生きている生活歯であれば、局所麻酔を行います。局所麻酔では、30G程度の細い針を使って麻酔薬を注入していくので、比較的痛みは少ないですが、注射が苦手な人の場合には、注射針挿入時の表面麻酔や、笑気ガスを使った方法も有効です。
セラミック矯正治療中の痛みについては、特に形成直後の仮歯期間には、しみるような痛みを生じることがあります。一時的ですが、痛みが強い場合や、冷たい物や温かい物を食べたり飲んだりすると痛みが発生するといったトリガーがある場合には、早めに歯科医師に相談しましょう。
セラミッククラウンをセットした後にも、痛みが出ることがあります。しっかりと調整したクラウンをセットするので、基本的には2週間前後で痛みや不快感は解消されますが、継続する場合には、歯科医師に相談が必要です。
どういった不具合や不快感がある際に、来院すべきかを、事前に歯科医師に質問しておきましょう。
⑥セラミック矯正した部分の歯茎が下がってきた場合
設計の失敗というよりも、歯茎はやせて下がることは、加齢現象の1つです。結果として、歯根が露出し、ポケットが深くなり、補綴物と歯茎の境目にプラークの蓄積が起こりやすくなります。結果として、う蝕や歯周病のリスクが増加します。
セラミック矯正治療後に歯茎が下がらない予防方法や、下がった場合の処置方法などについても歯科医師に確認しておきましょう。
セラミック矯正は、補綴物を口腔内にセットし、美しい口元を再現したら終了という治療方法ではありません。せっかく、時間や費用を費やしたセラミッククラウンを長持ちさせ、土台となる歯や隣在歯や対合歯の寿命を長くするためにも、定期的なメンテナンスが必要です。
メンテナンスでは、PMTC(Professional Mechanical Tooth Cleaning)の他、歯石を取り除くスケーリング、咬合状態の確認を行います。
【まとめ】セラミック矯正の失敗と後悔を防ぐために知っておくべき6つの注意事項
今回は、これからセラミック矯正をお考えの方に知っておいてほしい6つの注意事項についてご説明しました。
ぜひ、今回ご紹介した次の6つの注意事項を押さえておきましょう。
- ❶咬み合わせについて
- ❷審美性について
- ❸歯を削る(歯の形成)
- ❹神経治療・抜歯の必要性
- ❺痛みの予防・対策法
- ❻歯茎が下がったときの対処方法
セラミック矯正をお考えの場合には後悔しないためにも、多くの症例を経験した歯科医師のもとで治療を受けることが前提です。
繰り返しになりますが、審美性に限らず、咬合などについても重要視する歯科医師を選ぶことで失敗のリスクを最小限にすることができるでしょう。