八重歯とは
八重歯
八重歯とは、歯列が叢生(そうせい)した状態において、前歯の中心から数えて三番目の左右にある上顎の犬歯(糸切り歯ともいう)が外側に突出した状態を指す俗称で、鬼歯などと呼ばれることもあります。
犬歯の先端は尖っていて、特に強調されてみえることから、日本では八重歯を個性やチャームポイントとして捉えられる風潮もあり、歯並びが悪いというイメージはありませんが、歯科では歯列矯正の対象となります。
犬歯は歯根が長く、他の歯に比べ寿命が長い歯です。また、咬み合わせや下顎の位置を安定させる役割もあるため、八重歯だからといって安易に抜歯することはしません。
八重歯の症状とリスク
八重歯は悪い歯並びの一つです。そこで改めて八重歯のデメリットをまとめてみます。
虫歯や歯周病になるリスクが高くなる
八重歯の状態は、歯磨きをしても歯垢(プラーク)という細菌の塊を残しやすく、清掃不良を起こしやすい環境にあります。そのため、虫歯や歯周病になるリスクがより高まります。
犬歯としての役割を果たせない
犬歯はものを噛み切るための役割がありますが、犬歯が突出している八重歯の状態では、ものを噛み切る役割を果たせないことがあります。
歯が尖ったままだと割れるリスクがある
通常、人間の犬歯は使って噛んでいくうちに丸みをおびていきます。そのため、多くの方はそれほど犬歯は尖っていないのです。しかし、八重歯で犬歯が外側に突出していると、食事などの際に噛み合わず、犬歯が尖ったままというケースも少なくありません。また、歯が尖っていると割れるリスクも高くなります。
口が閉じづらくなる
八重歯で犬歯が前に異常に突出していると、口が閉じにくくなります。そのため口の中が乾燥しやすくなり、口臭や虫歯、歯周病のリスクが上がります。
八重歯の原因
八重歯の原因は、生まれつき歯が大きい、顎が小さいなど先天的なものが大きいといわれています。
顎の骨が小さい
永久歯は、親知らずを除くと全部で28本生えてきます。それらを並べるための顎骨が小さいと、自ずと歯列からはみ出る歯が出てきます。比較的はみ出しやすいのが犬歯であることから、顎の骨が小さいと八重歯になるリスクも高くなります。
歯が大きい
標準よりも大きなサイズの歯があると、スペース不足を招き、八重歯となることがあります。
歯の数が多い
本来生えてくるべき数よりも永久歯が多い場合は、スペース不足が生じ、そのしわ寄せとして八重歯になることがあります。
乳犬歯の晩期残存
乳犬歯が遅くまで残っていると、下に控えている犬歯が正しい位置に生えることができなくなることがあります。その結果、歯列の外側へとずれて、八重歯となるのです。
乳歯の早期脱落
乳歯の奥歯である乳臼歯が本来の時期よりも早く抜け落ちると、犬歯が生えてくるためのスペースが閉じてしまうことがあります。そうなると犬歯は外側にずれて生えるしかなくなります。
犬歯の歯胚の位置異常
生えてくる前の歯は、「歯胚(しはい)」という未成熟な状態で顎の骨の中に存在しています。そんな犬歯の歯胚の位置が異常であれば、八重歯などの歯列不正を引き起こすことがあります。
八重歯が悪い歯並びとされる理由
八重歯といえば、日本では昔から愛嬌があり、とくに女性は可愛さを象徴するチャームポイントとして捉えられています。しかし、海外では悪いイメージが定着しており、食べカスや歯垢がたまりやすく、虫歯や歯周病リスクが高まるなどのデメリットがあります。
海外では刃は“縁起が悪い”歯
いまは海外で活躍する方も多いですし、外国人の方と日常的に接する機会も増えてきました。このような中、外国人相手に八重歯は歯並びが悪いと思わずに、むしろ良いという思いが相手の印象を下げる結果になることもあります。
なぜなら、欧米ではヴァンパイヤティース、つまり吸血鬼の歯として扱われており、縁起が悪い歯とされています。実際、欧米人の方に八重歯を平気で披露すると、悪い印象を与え、「なぜ治さないのか」と健康意識が低いと感じさせてしまうこともあるようです。特にビジネスにおいては、肥満と同じ扱いをされて不利になる可能性もあります。
なぜ日本では八重歯が好まれる?
日本では、昔から八重歯は愛嬌があるとか、可愛いなどといわれることがあります。なぜ他国では吸血鬼や縁起が悪いといわれているのにも関わらず、日本では好まれているのでしょうか。
諸説ありますが、中でも古い時代に、日本人は柔らかいモノばかり食べており。とくに貴族がそうした傾向があったため、犬歯が尖ったままということが多かったといいます。そこで貴族の象徴として犬歯が鋭いままということから、八重歯が高貴な人を想起させ、ある種の憧れとなったという説があります。
また、日本は古くからビシッと白い歯がきれいに揃うようなものよりも、不完全さを愛する文化がありました。そこで、八重歯も不完全ではあるものの、その分、愛嬌があるといった考え方につながっていったといわれています。
どれが正解かは分かりませんが、日本人には古くからこうした考え方が根付いているのは事実です。しかし、ひとたびグローバル社会になった今となっては、八重歯が好まれるといった流れは薄れてきています。そして、何より歯の生涯に渡る健康に注目があつまる現代社会においては、機能性の面から八重歯でいることが問われています。
虫歯になりやすく機能面でもリスクがある
八重歯はいってみれば歯がガタガタであるため、その段差に食べかすや歯垢が詰まりやすく、歯ブラシで取りにくいため、虫歯や歯周病になりやすい歯の一つです。
咬み合わせの面でも問題があります。犬歯が前に飛び出しているということは、正しく歯として機能しないばかりか、下の歯と正しく咬み合わされないことになります。不正咬合は顎関節症につながる恐れもあります。
八重歯の治療方法
八重歯を治療する際に、歯を抜く方法もありますが、できるだけ歯は残す方向で治療を進めたいものです。しかし、長期間時間を要したり、費用が思っているよりも高かったりすることも支障があります。八重歯が気になっており、実際に治療を受けられることを検討されている方は、ぜひ一度ご相談ください。最適な治療方法をご案内いたします。