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八重歯の原因と矯正治療

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八重歯とは

八重歯の症例

八重歯は、歯科医学的には犬歯低位唇側転位と呼ばれる歯列不正のひとつです。上顎に比較的多く認められますが、下顎に生じることもあります。

日本では、八重歯は長い間「かわいい」というイメージがあり、わりと肯定的に捉えられていました。一方、欧米諸国や中国では、八重歯に決して良いイメージはいだかれていません。

社会のグローバル化により、こうした情報が国内に伝わるにつれて、日本でも八重歯のイメージが変わりつつあります。八重歯のイメージの悪化により、八重歯の解消を目的として矯正治療のニーズも高まりつつあります。

八重歯の症状とリスク

八重歯の症状は、単に見た目が悪いというだけではありません。さまざまなトラブルのリスクをはらんでいます。

審美障害

八重歯の多くは、犬歯だけの歯列不正に止まりません。

歯並び全体を見ると、叢生という歯の位置が凸凹とした状態になっていることが多いです。特に前歯部を中心に叢生になっていると、顔貌の第一印象に関係しやすい歯列の審美性が悪化してしまいます。

顎関節症

下顎骨は頭部のいずれの骨とも結合していません。このため、下顎の位置はとても不安定です。

下顎が不安定であっても、安定してきちんと噛み合わせられる理由は、上顎と下顎の犬歯が触れ合うことで無意識に位置を調節しているからではないかと考えられています。

しかし、八重歯になると上下の犬歯が適切に触れ合うことができなくなり、下顎の運動の基準がなくなります。下顎の運動が不安定化し、顎関節に過度な負担が生じると、顎関節症を引き起こすリスクが生まれます。

口腔粘膜損傷

犬歯は、先端が尖った形をしています。

八重歯になると、はみ出した犬歯の先端部分が唇や頬に当たりやすくなります。このため、八重歯の位置によっては、食事のときなどに口唇や頬粘膜を損傷する可能性があります。

歯肉退縮

八重歯の唇側(表側)の歯肉は、八重歯でない歯と比較するとどうしても薄くなりがちです。このため、他の歯と比べると、歯肉退縮が生じやすい傾向があり、八重歯の犬歯が大きく見える理由のひとつとされています。

象牙質知覚過敏症

象牙質知覚過敏症は、冷たいものなどの刺激により、歯に一過性の痛みを生じる症状です。

象牙質知覚過敏症は、歯肉退縮により露出した歯根部分に生じやすい傾向があります。八重歯は頬側歯肉が薄いため、歯根部分の歯肉が露出すると、象牙質知覚過敏症を引き起こすリスクがあります。

齲蝕症や歯周病のリスク

齲蝕症(虫歯)や歯周病は、歯の表面についているプラークの中にいる細菌が原因で起こります。ブラッシングによるプラークの除去がことさら重視されるのは、歯の健康を保つためです。

しかし、八重歯の周囲はブラッシングがしにくいです。八重歯を放置していると、犬歯だけでなく、その周囲の歯を含めて齲蝕症や歯周病のリスクが高くなります。

口腔乾燥症

八重歯の位置や大きさによっては、口を閉じることが難しくなることもあります。

お口の中は、唾液によって湿潤した状態に保たれていますが、口を開け続けていると唾液が蒸発して口腔内の湿気が失われてしまいます。この結果、口腔内が乾燥する口腔乾燥症のリスクが生じます。

口腔乾燥症になると、齲蝕症や歯周病など歯の病気や呼吸器系の病気などにかかりやすくなります。

口呼吸

八重歯のために口を閉じにくい状態が続くと、口で呼吸する癖が生じることがあります。

本来、呼吸は口ではなく、鼻でするものです。口呼吸が常態化すると、口腔乾燥症がさらに悪化し、歯やお口、全身の健康障害を引き起こすリスクが高くなります。

口臭のリスク

口臭の原因はさまざまですが、原因の大多数はお口の中にあると言われています。特に関係性の高さが指摘されているのが、磨き残しやプラークです。

八重歯の周囲はブラッシングが難しいので、磨き残しやプラークが残りやすい傾向があり、口臭の発生リスク要因です。

口腔乾燥症になると、唾液の持つ洗浄作用や細菌の活動を抑える抗菌作用も失われるので、こちらも口臭の原因となります。

役に立たない

犬歯は食べ物にくいついて、それを引き裂くという役割を持っています。数ある歯の中で、犬歯の歯根が最も長く丈夫なのですが、その理由はこの役割のためではないかと考えられています。肉食動物の多くが、大きな犬歯を持っているのはそのためとも考えられます。

八重歯になった犬歯は噛み合わせられないので、本来の役割を果たせなくなります。

他の歯の負担増

八重歯になった犬歯は本来の役割が果たせませんので、他の歯を使って犬歯の役割を代用せざるを得なくなります。

このため、他の歯に加わる負担が大きくなり、歯が欠けたり割れたりするなどのリスクが生じます。

八重歯の原因

さまざまな症状や健康リスクの原因となる八重歯は、どうして起こるのでしょうか。

顎の骨格と歯のアンバランス

すべての歯の横幅を合計した値と、歯が生えるべき顎の大きさを比較して、顎の大きさの方が小さい場合、歯はきれいに収まりません。

すると、歯並びは必然的に叢生と呼ばれる凸凹とした歯並びになります。八重歯も叢生の一種ですので、その発症には顎の骨格と歯の大きさのバランスの影響を受けます。

乳歯の早期喪失

乳歯の早期喪失とは、乳歯が適切な時期よりも早い時期に抜けてしまうことです。

乳歯が早く抜けてそのまま放置していると、抜けた乳歯の奥の歯が前方に傾きながら寄ってきます。すると、永久歯が生えるために必要なスペースが失われてしまいます。

犬歯の周囲の乳歯がそうなると、犬歯の生えるべきスペースが失われるので八重歯になります。

乳歯の晩期残存

乳歯の晩期残存とは、乳歯が生え変わる時期が来ても抜けずに残ったままになっていることです。

犬歯は、乳犬歯の生え変わりとして生えてくる永久歯です。

乳犬歯が残っていると、犬歯は生えることはできません。犬歯が遅れて生えてくると、その周囲の歯は生え終わって、犬歯の生えてくるスペースが不足するという状況も考えられます。

このように、乳犬歯の晩期残存も八重歯の原因のひとつです。

永久歯の生える順序

犬歯は、永久歯の中で生え変わりの順序が遅い歯として知られています。

犬歯が生える時期に、犬歯が生えるスペースが失われていると、必然的に犬歯は歯並びからはみ出してしまいます。

生え変わる順序が遅いというのも八重歯の発症にとても関係しています。

犬歯の位置のずれ

歯は顎の骨の中にある歯胚という組織が元になり、時間をかけて成長発育してお口の中に生えてきます。

もし、犬歯の歯胚の位置がずれていると、犬歯が生えてきたとき、その位置が唇側にずれて八重歯になってしまいます。

埋伏過剰歯

過剰歯とは、正常な歯の数よりも多い余分な歯です。奇形の歯が多く、過剰歯は歯本来の役割を担うことはできません。

上顎の前歯部に生じることが多く、過剰歯があるとその周囲の永久歯が押され、きれいに生えなくなります。

過剰歯により犬歯の周囲の歯の位置がずれてしまうと、犬歯が生えるスペースが失われてしまうので、八重歯になる可能性が生じます。

八重歯が悪い歯並びとされる理由

八重歯がことさら悪い歯並びとされるのには、理由があります。

海外でのイメージ悪化要因

八重歯は、欧米諸国ではドラキュラや魔女をイメージさせる歯として嫌われています。

アジア諸国でも八重歯を嫌がる傾向は同じで、中国では虎の歯と呼ばれ、幸せが逃げていくと思われているそうです。

海外では歯列不正を放置していると、自己管理ができない人とみなされることがあります。海外で仕事をしようとする日本人ビジネスマンの方々にとっては、八重歯は自分自身のイメージを悪くする歯列不正と見えるようです。

歯の健康上のリスク要因

八重歯は、齲蝕症や歯周病などの歯の健康上のリスク要因となるばかりか、齲蝕症などの治療を困難にする要因にもなります。

歯の健康に悪影響を及ぼすため八重歯は、悪い歯並びといえます。

全身的な健康リスク要因

八重歯があるためにお口が閉じられないと、口呼吸をする可能性が高まります。口呼吸は、咽頭炎や扁桃炎の原因となります。

扁桃炎は免疫機能の低下を引き起こし、アトピーやリウマチ、掌蹠膿疱症などの扁桃病巣感染症などにつながることが明らかになっています。

このように、八重歯は、全身的な健康上のリスクとなり得るので、ことさら悪い歯並びとされています。

八重歯の治療方法

さまざまな健康上のリスクをはらんでいる八重歯は、どのようにして解消するのでしょうか。

ワイヤー矯正・マルチブラケット矯正

ワイヤー矯正は、歯の表面につけたブラケットと、その中央にある溝を利用して通した弾性ワイヤーの働きで歯を移動させる矯正治療法です。矯正治療といえば、まずこの方法がイメージされるくらい広く普及した治療法です。

叢生のひどい八重歯なども効果的に治療できますが、食事や歯磨きに影響が出やすいのが難点です。

八重歯の犬歯を収めるだけのスペースがなければ、第一小臼歯という歯を抜歯するなどしてスペースを確保します。

ワイヤー矯正・マルチブラケット矯正の詳細はこちら

マウスピース矯正

マウスピース矯正は、薄く透明度の高いマウスピースを矯正装置として利用する矯正治療法です。マウスピースを一定の間隔で定期的に新しいものに交換することで、歯を移動させていきます。

マウスピース矯正は、マウスピースをつけていても一見しただけではわからないほどに目立ちませんし、食事や歯磨きのときに外せる利便性の高さも利点とされます。

一方、一日20〜22時間以上つけないと治療の効果が得られないので、つけ忘れが多いと治療計画通りに進められないのが難点です。

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インプラント矯正

インプラント矯正は、歯科用アンカースクリューというチタニウム製の小さなネジのようなものを顎の骨に埋め込み、そこにかけたゴムの力で歯を移動させる矯正治療です。

一般的な矯正治療では、大臼歯という奥歯を支えにして歯を移動させるので、大臼歯を後ろに移動させるのは難しいです。

インプラント矯正なら、アンカースクリューを支えにして歯を移動させるので、大臼歯も後ろに下げられます。

大臼歯を後ろに移動させれば、それだけスペースにゆとりが得られるので、抜歯しなくても八重歯をきれいに収められる可能性が高まります。

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歯列拡大治療

歯並びを広げて、歯を並べるスペースを確保する矯正装置を拡大装置といい、拡大装置を使った矯正治療を歯列拡大治療と呼んでいます。

拡大装置は、大きく分けると歯に接着する固定式と取り外しできる可撤式の2タイプになります。固定式は、顎の骨とともに歯並びを大きくします。可撤式は、歯ならびを横方向に広げるために使われます。

いずれも成長発育段階にある子どもに使うと、効果的に歯を並べるスペースが確保できるので、八重歯を予防することもできます。

MTM矯正

MTMとはMinor Tooth Movementを略した言葉で、1〜数歯を対象とした矯正治療です。歯並び全体を整えないので、部分矯正ともいわれます。

移動させる歯が少ないので治療期間が短く、治療費も抑えられるのが利点です。

一方、八重歯になった犬歯の位置のずれが大きい場合は、MTMでの対応は難しいので、症例によっては適応できないのがMTM矯正の難点です。

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抜歯

犬歯はとても大切な歯ですので、できる限り残して矯正治療をするなど、歯を守りたいところです。しかし、そうでないこともあります。齲蝕症で八重歯の歯冠の大部分を失った場合です。そのようなときは、矯正治療で歯を移動させることは難しいです。また、他の健康な歯を抜歯してスペースを確保するよりも、齲蝕症になった八重歯を抜歯した方がいいということも考えられます。

このように、八重歯を残すことが適切でないと判断される場合は抜歯となります。

セラミック矯正

セラミック矯正は、セラミッククラウンを装着することで、歯並びの見た目を改善させる治療法です。クラウンを使うことから、補綴矯正に分類されます。

セラミック矯正は、歯の形や色も同時に改善できるうえ、治療期間が短いのが利点です。一方、八重歯になった犬歯の位置が大きくずれていると、セラミック矯正での対応は難しいなど、適応範囲に限度があるのが難点です。

セラミック矯正の詳細はこちら

八重歯の治療で外科手術をすることはありますか?

八重歯の原因が顎の骨格にある場合、顎の骨格の形や位置なども整えなければなりません。

成人の顎の骨格を整える方法は顎矯正手術しかないので、骨格に原因がある場合は外科手術をする可能性があります。

八重歯の治療は何歳までに受けなければなりませんか?

矯正治療には年齢制限はありませんので何歳でも受けられますが、年齢とともに歯周病などのリスクが高くなります。

歯周病などの歯の病気があれば矯正治療は受けられませんので、リスクの少ない若いうちに受けることをおすすめします。

犬歯のほとんどが埋まったままになっているのですが、これも八重歯ですか?

噛み合わせの位置に達していない犬歯を八重歯と言いますので、おっしゃる犬歯も八重歯です。

この場合の矯正治療は、犬歯を引っ張り出しながら位置を調整し、歯並びの中に収めるようにします。

どのような方法が適しているかは、歯科医師の診断によりますので、一度検査にご来院ください。

肩こりや首のこりに八重歯は関係していますか?

顎関節症は顎関節だけでなく、その周囲の筋肉の痛みなども伴う病気です。

八重歯により顎に加わる負担が大きくなると、周囲の筋肉にも負担が加わり、筋肉痛を生じることがあります。このため、首や肩に違和感が生じ、それを“こり”として感じることは十分考えられます。

八重歯はマウスピース矯正で治せますか?

マウスピース矯正だけで治せる歯列不正は限られています。

マウスピース矯正だけで整えるのが難しい場合は、部分的にマルチブラケット矯正を併用したり、アタッチメントをつけたりすることがあります。

マウスピース矯正だけで対応できるかどうかは、歯科医師の診断によりますので、検査にご来院することをおすすめいたします。

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